近年、日本を訪れる外国人の急増により注目を浴びているインバウンド業界。訪日外国人による消費は年々増え続けています。しかし、一人当たりの消費額は減少傾向にあります。そこで、爆買いブームは終わってしまうのか、それらの「インバウンド消費」の増加は止まってしまうのか、こう言った懸念について徹底解説していきます。

インバウンド消費とは?

「インバウンド消費」とは、「インバウンド(inbound、訪日外国人旅行客を指す)」と「消費」を合わせた造語で、訪日外国人旅行客の国内での買い物や宿泊、飲食による消費を意味します。 2015年ユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選出され、皆さんが一度は耳にしたことがあるであろう「爆買い」もインバウンド消費に含まれる言葉です。

訪日外国人旅行客は日本で何に対し消費をしているのか

日本のインバウンド消費額

では実際に訪日外国人旅行客が日本でどのくらいの消費をしているのか、そしてその消費額はどういった推移をしているのかを見ていきましょう。観光庁が毎年訪日外国人旅行客の消費額を調査し、発表しているデータをまとめた図があります。

 

図:旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移(左:(億円)、右:(万人))

観光庁より(http://www.mlit.go.jp/common/001084355.pdf)

この図は2011年から2015年までのデータですが、訪日外国人旅行客数、消費額共に年々増加し、2015年の消費額は3兆4771億円と推計されており、前年比で71.5%増と急増していることがわかります。この急増の要因としては、訪日ビザ発給緩和や免除、消費税免税制度改正、安倍内閣の経済政策「アベノミクス」によって歴史的な円高が解消され、円安が進んだことなどが大きく影響していると考えられます。

インバウンド消費額の内訳

では訪日外国人旅行客が日本で何に対して消費をしたか、その内訳を見てきましょう。

 

SATOより(http://www.sato.co.jp/inbound/market/)

この図は観光庁のデータを円グラフにしたもので、2014年と2015年のデータを比較しています。まず大きく変わった点は、前年度の割合比との差では6.6%ですが、消費額が2倍以上に増えた買い物代でしょう。これだけの急増を支えているのは消費税免税制度改正によって起きた、「爆買い」が要因と思われます。

国別の消費額比

「爆買い」と聞くと、主に中国人旅行客による買い物を連想すると思いますが、実際の消費額のデータを見て見ましょう。

 

観光庁より(http://www.mlit.go.jp/common/001084355.pdf)

中国が全体消費額の約41%と、圧倒的な割合を占めています。その次に台湾が15%、韓国が約9%、香港が約8%、アメリカが約5%となっています。これらのTOP5の国だけで全体の約77%と、大半を占めていることがわかります。また、TOP5の内4カ国がアジア圏となっており、近隣国との結びつきの強さを感じることができます。

近年の消費額や訪日外国人旅行客数の推移

2016年のデータから見る現在の傾向

ここまで2015年までのデータを見てきましたが、2016年のデータを見ていきましょう。

観光庁より(http://www.mlit.go.jp/common/001158884.pdf)

訪日外国人旅行客数については順調に数を増やしていますが、消費額が前年や前々年ほど伸びておらず、大きく減速していることが見てとれます。

なぜ消費額の増加が減速したのか

なぜ消費額の増加が減速してしまったのか、その原因について見ていきましょう。

観光庁より(http://www.mlit.go.jp/common/001158884.pdf)

まずは消費額の内訳について見ていきましょう。買い物代の割合が前年に比べ、3.7%減少しているのが分かります。また、それに伴い、宿泊料金や飲食費が割合を増やしているのが分かります。ここから考えられるのは「訪日外国人旅行客の増加に伴い、宿泊費や飲食費などの必須となる費用が増えたが、何らかの原因で買い物行動が減少傾向となっている。」と考察できます。

一人当たりの消費額の推移

なぜ消費額の増加が減速してしまっているのか。その原因と考えられるデータを見ていきましょう。

観光庁より(http://www.mlit.go.jp/common/001158884.pdf)

この図は訪日外国人旅行客の一人当たりの消費額の推移を表したグラフです。2012年からのデータですが、徐々に金額が増加しているのが分かります。2015年は「爆買い」の影響もあり、大きく消費額が増加したのが見てとれます。ところが2016年になると一人当たり2万円、割合にして前年比11.5%減と大きく減少してしまっていることがわかります。

なぜ消費額は減少傾向にあるのか?

なぜ近年まで好調だった消費額の増加が減速しているのか、その原因について考察していきましょう。まず一番の原因と考えられるのが、中国人旅行客による「爆買い」が激減していることだと思われます。先ほどの図に、中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少していると書かれています。これは「爆買い」が激減していることを裏付けるデータです。

なぜ爆買いは激減してしまっているのか?

近年徐々に「爆買い」が増加傾向にあり、2015年には大きく増加したのにも関わらず、どうして急に「爆買い」が激減してしまったのか。その原因は、大きく分けて2つ考えられます。一つは、中国政府が海外で購入した製品に課す関税を引き上げたこと。もう一つは、中国国内の経済が減速傾向にあること。これらの原因により、「爆買い」が激減していると見られています。

なぜ関税の引き上げを実施したのか?

中国政府は2016年4月、突然海外で購入した商品に課す関税を引き上げました。その対象は輸入品だけではなく、個人が海外で購入した製品にも適用されるとの事。この引き上げが告知されたのが適用開始の2週間前であったらしく、突然の強行策に困惑する中国人が溢れかえっていたと言われています。一体なぜ中国政府は、半ば強引に「爆買い」をやめさせるような政策を実施したのでしょうか。それは中国国内の経済が減速傾向にあることと深く関連しています。中国国内では、海外での消費額が増える一方、国内での消費額や訪中外国人による消費が減少傾向にあります。これに歯止めをかけるべく、中国政府は海外での購入品に対して関税をかけることで国内消費を促し、国内消費を増加させようと考えたと見られています。

参考:中国人に人気の日本のお土産とインバウンド観光マーケティング(http://omiyagejapan.blue/2016news/bakugaistop.html)

今後のインバウンド消費の推移予測

爆買い終了を受けてインバウンド消費は減少してしまうのか

訪日外国人旅行客による消費の大部分を占めていた中国人旅行客。その中国人旅行客による「爆買い」が激減してしまった影響を受けて、今後の消費額は減少傾向に向かってしまうのでしょうか。答えは「No」です。「爆買い」の減少による個人消費額の減少と同時に、日本の文化や観光に対する興味が高まっています。代表的なものとしては、もともと海外からの関心が高かった「和食・日本食」や、日本のアニメ・漫画などの文化がこれからのインバウンド消費の中心となっていくと見られています。また、新たな試みとして「医療観光」や、今まで訪日外国人旅行客が訪れなかった都市部以外の地方への誘致があります。

爆買いから文化や観光へ需要が変化した今の課題

都市部での鉄道などの交通手段は、日本は世界でトップレベルと言われています。しかし、日本を訪れる外国人旅行客からすると日本の鉄道は非常に複雑で、分かりづらいと言います。ですので、乗り換えなどを簡単に検索できる、多言語に対応した案内が必要になってくると予想されています。また、訪日外国人旅行客が最も不便に感じているのが公共の無料Wi-Fiの有無です。これらを都市部だけではなく、地方にも広く整備していくことが今後の課題となっています。

参考:株式会社NTTデータ経営研究所(https://www.keieiken.co.jp/monthly/2016/0328/index.html)

まとめ

今回の記事で解説した内容をまとめてみましょう。

・インバウンド消費とは、訪日外国人旅行客が国内で行った消費を指す

・インバウンド消費は近年増加傾向にあり、その背景にあるのは主に、「訪日ビザ発給の緩和」、「消費税免税制度の改正」、「円安」である

・消費額の約7割がアジア圏であり、訪日外国人旅行客数も急増している

・しかし、2016年では消費額増加が減速しており、その原因は中国の関税引き上げによる「爆買い」の激減と考えられる

・今後は買い物による消費から、観光や文化に対する消費が増えていくだろう

・それらを受け、今後の課題はインフラ整備であるだろう

いかがでしたでしょうか。インバウンド消費はまだまだ未開拓な部分が多い分野です。今はどういう状況か、今後はどうしていくべきかをしっかり把握し、その上で国や企業だけでなく個々人で行動を起こしていくことが重要です。