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「爆買い」から「体験」へ―インバウンドの変遷を辿る

目次

インバウンドにおける爆買いとは

「爆買い」とは、訪日中国人観光客による日本での大量購買のことです。この言葉が使われるようになったのは2015年頃ですが、実際2013年頃からこの「爆買い」と呼ばれる購買行動は始まっていました。
買われる品目も時とともに変わっています。2013年頃は紙おむつが人気でした。紙の質の良さが話題となり多くの中国人が日本で紙おむつを買いだしたのです。それからは家電製品、化粧品がどんどん台頭していきました。どれも日本製の質の良さが購買の根源にありました。

なぜ爆買いが起こったのか

爆買いが人気になった原因はインバウンドが人気になった背景と似ています。ビザの規制緩和、免税制度改正、そして円安です。詳しくは下記にインバウンドについてまとめた記事を載せていますのでそちらをご参照ください。
ここではそれ以外の要因について2つ触れたいと思います。

  • 日本製品の質への信頼

中国人が日本製品を求めるようになった背景としてやはり「安全性」が挙げられると思います。2008年の粉ミルク事件や冷凍ギョーザ事件は、日本でも大きく取り上げられました。中国製品の安全性に懐疑的な目が向けられるようになり、中国国内でも安全性を求める声が高まりました。その結果、日本で確かな品質の製品を買うという流れが起こったのです。

  • 親族を大事にする中国文化

大量に家電製品や化粧品を買っていく中国人、実はほとんどが親族や家族へのお土産なのです。中国では日本よりも親族の絆が強い伝統があります。日本へ旅行へ行く際も、親族へのお土産は忘れません。そのため一度に大量買いをするのです。

どれくらいの経済効果があったの?


この爆買いが日本へもたらした経済効果はどれくらいなのでしょうか。観光庁の統計によると最も話題となった2015年でその消費額は8,089億円にもなりました。一人あたりの買い物代も161,974円と平均73,663円に比べ段違いに高いことがわかります。日本のインバウンド観光は中国の爆買いから多大な影響を受けていたのです。

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日本観光の王道ゴールデンルートの盛衰

中国人にとって日本観光といえば

爆買いというワードが話題になった2014年頃、訪日観光客の観光ルートは限られており、観光客にとって標準となります。それが「ゴールデンルート」です。ゴールデンルートの内訳は次のようになります。
成田空港へ降り立ちまずは銀座、築地、浅草等東京を練り歩きます。その後は西へ進路を取り箱根温泉や富士山でたっぷり自然を堪能、名古屋を通り京都へ移動します。京都では清水寺や金閣寺など、日本の伝統的な文化に浸り最後は大阪で食い倒れ、関西国際空港から中国へ帰国します。
どうでしょうか、確かに日本を観光するのであれば外せないような名所ばかりです。

増え始めた地方ルート

中国においても当初はゴールデンルートが人気でした。しかし、円安や地理的距離の近さから場所を絞って観光するようになりました。そのような流れの中、地方へ観光する観光客が増えたのです。またそれに伴い中国人が日本に求めることも変化してきたのです。次の章では観光の変遷について見ていきます。

モノからコトへ。観光目的の変化

爆買いの失速

2014年から急激に拡大した爆買いですが、2016年に入って陰りが見え始めます。全国百貨店協会によると、2016年におけるインバウンドは、3月から11月まで前年比9ヶ月連続マイナスを記録しています。11月のデータによると購買客数は23.7万人と前年比12.2%増だったのに対し、購買単価が約61,000円と17.2%減となっています。ハイエンドブランド商品から化粧品へと購買品目が変化したことが要因としてあると見られています。

体験型プログラムへの需要増大

こういった消費の縮小化と同時に観光目的の変化も起こってきました。中国の旅行サイト携程旅行網によると、中国で人気の旅行ジャンルは、健康物理療法(17%)、ハイキング(16%)、スキー(15%)、自然探索(8%)という結果になりました。つまり中国人自身がショッピングから体験へと旅行の関心を移しつつあることを示しています。

地域の取り組みの活性化

このような流れを受け、地域では独自の観光資源を発掘し、発信しようという取り組みが始まりました。よりディープな、日本でしか経験できないような、そのようなツアーが企画され成功するようになったのです。

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体験型プログラム事例集

うまくインバウンドの流れを取り込んだ例


さて、ではどのような取り組みが成功したのでしょうか。平成27年3月に観光庁が発表した「インバウンドを見据えた着地型観光調査」では観光客招致に成功した地域の取り組みが紹介されています。今回はその中から抜粋して3つほど紹介し、その成功のポイントを探っていきます。

山形県西置賜郡飯豊町

飯豊町ではスノーモービルの体験受け入れ事業を行っています。1月から2月の間、観光協会が運営する「どんでん平スノーパーク」で、巨大滑り台やバナナボート、スノーモービルの体験を実施しているそうです。また、中津川地区の農家民宿を利用した民泊と田舎暮らし体験プランを実施し、台湾観光協会より金賞を受賞しました。これほどまでに成功した理由を観光庁は「コンサルティング会社への積極的な働きかけ」としています。

三重県伊勢志摩

伊勢志摩地域では、春夏秋冬別に約30ものエコツアーを実施しています。「もんど岬シーカヤック・カフェツアー」や「海賊の城と城下町の夜歩きツアー」など、現地の人しか知らないような魅力的な楽しみ方を提供しています。ここでは観光協議会でのコーディネーターとしての役割が注目されていました。それぞれのターゲットに分けて相談先を柔軟に変えるなどという対応が、よりターゲットにフィットしたツアーを生み出していたということです。

広島県尾道市、愛媛県今治市、越智郡上島町

この2つの地域が一体となって行っているのはレンタサイクル事業です。瀬戸内しまなみ海道にある自転車道を利用し、外国人の招致を行いました。外国人にもわかるように多言語の案内板を設置したり、サイクリングルートを色分けしたりすることで、円滑な運営を可能にしました。さらに周辺の島々で体験プログラムを行うことで一歩踏み込んだ体験もできるように配慮しています。

3つの事例に共通点から見えるインバウンド観光の可能生

さて、3つほどご紹介しましたが、これらに共通していることは地域同士、あるいは観光協会と会社との連携がうまくいっている点です。現地のプロモーションに強いところと連携することで、ことばの壁やターゲットの不明確な点を創意工夫で打開することができています。王道は着物体験や茶道体験ですが、旅行客が大事にしているのは「その場所でしかできないこと」です。どんな観光資源であっても創意工夫次第でインバウンドに結びつけることが可能になります。ぜひ参考にしてみてください。

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まとめ

爆買いから体験へ移り変わる日本観光

・爆買いとは2013年頃から始まった訪日中国人観光客による大量購買行動である。
・円安、免税制度、VISA緩和の他、日本製品の質への信頼、そして親族を重んじる文化が爆買いを加速させた。
・かつては「ゴールデンルート」と呼ばれる観光ルートが主流だったが、中国では為替や地理的要因から場所を絞って観光するようになった。
・中国人の嗜好の変化、購入品目の変化から爆買いが落ち着き、代わりに体験型プログラムが台頭してくるようになった。
・日本の地方でもインバウンドを取り込むチャンスが生まれ、地域での取り組みが増加。
・観光資源をうまく発掘し、会社や国と連携することが成功へとつながっている。
いかがでしたか?モノからコトへインバウンドの中心が移り変わりつつあること、そしてチャンスの幅がより広がっていることがわかっていただければ幸いです。
参考:
インバウンドを見据えた着地型観光調査(観光庁)
中国人の日本観光、「ショッピング」から「体験型」へ変化
2016年11月外国人観光客の売上高・来店動向【速報】(日本百貨店協会)
訪日外国人消費動向調査平成27年年間値]]>

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