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農業に迫るインバウンドの波
政府の方向性から見る農業×インバウンド
平成28年度予算概算要求「食と農を活用したインバウンドの推進」には、これから農業においてインバウンドを推進していく旨が書かれています。具体的には、海外に向けて日本の「食」と「農」を発信し、訪日したときの受け入れ態勢を強化すること、帰国後も継続的に日本の食を楽しめるように輸出を促進することを施策としてあげています。
このように、農を通じて日本観光が徐々に変化しつつあるのです。その背景には「体験型プログラム」の隆盛があります。インバウンドが流行り始めた頃はまだ、東京や京都など王道の観光が主流でした。しかし日本の根源的な良さを体感しようとする観光客が増え、体験型プログラムが昨年ごろから流行しているのです。今回は、農林水産省の発表した事例集の中から農×インバウンドの可能性を開拓する珠玉の事例集を2つほどご紹介したいと思います。
農業×インバウンド厳選2選
外国人留学生が情報発信をする(奈良県奈良市)
これはインバウンド業界全体に言えることですが、言葉の壁を乗り越えるというのが成功事業の大きなポイントとなります。一般的には日本人のバイリンガルを雇うことが多いのですが、奈良県奈良市では外国人留学生をアンバサダーとして起用することでこの壁を乗り越えました。
奈良のお茶は大和茶と呼ばれています。あまり馴染みはありませんが、大和高原の冷涼な気候により良質な茶葉が収穫されるのです。それを海外に広めるため、奈良市は外国人留学生向けに「大和茶アンバサダー」というボランティアを募集しました。お茶に関する様々な体験の後、その体験を母国語で発信してもらうという仕組みです。観光客を集めるためにいきなり広報という形ではなく、まずは身近にいる留学生から効果的に広めていく素晴らしい例です。
過疎地域の歴史的建築物を宿場にする(兵庫県篠山町)
多くの農村地域では高齢化、過疎化が進んでいます。兵庫県篠山町の集落丸山もその一つでした。一般的社団法人ノオトはこの過疎化した地域に「観光資源」を見出し、活路を切り開きました。
集落丸山には築150年以上の古民家がありました。それを周辺地域を巻き込んだ一つの特別な「宿」とすることで、集落の内側で暮らすという体験を提供したのです。宿を切り盛りしているのは地元の住民で、農作業をしたり、城下町を散策したりできます。さらに食事はミシュラン1つ星を獲得した料理と地元の住民による家庭料理、つまり全く異なる2つアプローチで地域食材を堪能できるのです。将来的には篠山城の城下町地域一帯を観光区域にしようという長期の視点を持っているからこそ成功した大胆な例だと思います。
つながりのステップ
いかがでしたでしょうか。前者は広報を段階的に行い、まずは基盤を強化しようとした例、後者は観光資源を見出し、長期的な視点の中で運用し見事成功した例でした。両者に共通しているのは、「繋がりのステップ」をきちんと踏んでいる点だと思います。留学生をアンバサダーに任命することでプログラムが修了した後もコミュニティとしては存続します。また、集落丸山も、住民のコミュニティの輪を徐々に広げていくことで観光資源を増やしていくという戦略をとっています。二つ事例は下記の参考に掲載されています。ぜひご覧ください。
参考:近畿の食と農インバウンドの先駆的事例について(農林水産省)
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