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2018年、インバウンド客数が3000万人を突破し、彼らの消費額は4兆5000億円に達しました。(※1・2) どちらも過去最高の数値で、2019年も順調に推移すると見られています。
インバウンド市場が勢いづいていることは、ビジネスを成長させるにあたって喜ばしい状況です。ただその分参入する企業が増加し、競争も激しくなりつつあります。
今後インバウンド市場で成功を収めるには、「いかに魅力的な商品・サービス・環境を用意し、訴求力の高いメッセージを届けて誘致するか」という戦略面の良し悪しが極めて重要です。
今回は「インバウンド戦略」に焦点を絞り、国の戦略や企業が策定する上でのヒント、成功事例といった詳細を解説します。
※1:日本政府観光局/訪日外客数(年表)
※2:観光庁/訪日外国人消費動向調査(2018年確報)
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インバウンド戦略【国が行う4つの施策】
まずは国が行うインバウンド戦略について解説していきます。
観光立国実現という目的の下、政府は2003年に「グローバル観光戦略」を打ち出しました。
グローバル観光戦略は4つの小戦略からなり、それぞれ①外国人旅行者訪日促進戦略、②外国人旅行者受入れ戦略、③観光産業高度化戦略、④推進戦略と呼ばれます。
政府が描くシナリオは、企業のインバウンド事業にも影響するため、押さえておかなければなりません。ではそれぞれの戦略を詳しく見ていきましょう。
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インバウンド戦略①外国人旅行者訪日促進戦略
一つ目の戦略は、「外国人旅行者訪日促進戦略」です。こちらは外国人が訪れたくなる、魅力的な国作りのための指針です。
具体的な取り組みは、市場調査と分析によりインバウンド客のインサイトを掴み、旅行商品開発やプロモーションへ繋げる活動を政府主導で行うというものです。
同時に、世界中の観光産業を調査・分析し、日本がとるべき方向性を明らかにします。
市場調査に関連して、観光庁が公開している「訪日外国人消費動向調査報告書」というデータ資料があります。(報告書⇒第1編・第2編・第3編)
客数や消費額といった統計的な数値から、訪日客のニーズや不満点などの意識・行動も把握できるため、インバウンド事業に携わるのであれば必ずチェックしておきましょう。
プロモーション面の施策だと、官民一体で販促を行う「ビジットジャパンキャンペーン」、欧米豪に特化したキャンペーン「Enjoy my Japan」などがあります。
また主にアジア各国を対象にした段階的なビザ発給要件緩和も、この戦略の一環として行われています。
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インバウンド戦略②外国人旅行者受入れ戦略
二つ目の戦略は、「外国人旅行者受入れ戦略」です。こちらはインバウンド客にとって不便な点をなくし、彼らが旅行しやすい環境を整備するための指針です。
主な取り組みは、各地の標識や案内の多言語化・通訳スタッフ拡充支援・キャッシュレス決済導入促進・交通インフラ整備などがあります。
言語・決済・交通は、いずれもインバウンド客が旅行中に困ったことの上位にランクインしているため、引き続き重点的に取り組む必要のある課題です(※)。
とは言え、各施策は一企業だけで対応できる規模ではなく、国や自治体と連携しながら進める必要があります。だからこそ、政府が戦略をもって指針を示しています。
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インバウンド戦略③観光産業高度化戦略
三つ目の戦略は、「観光産業高度化戦略」です。 読んで字のごとく、日本の観光産業をより高度化するための指針になります。
主な取り組みは、企業間連携の強化・民間企業への支援・既存環境のブラッシュアップなどです。
日本のインバウンド市場は、過熱しているとは言え、世界的に見ればまだまだの段階です。
外へ目を向けると、外国人観光客の誘致数が世界No.1のフランスは8700万人を、消費額No.1のアメリカは23兆円を記録しました。
同じアジア圏を見ても、中国とタイが日本より上位にいます。(※)
多くの国が外国人旅行者誘致に力を入れる中、日本を選んでもらうには、観光業そのものを高度化し、より魅力的な訪問先にする必要があります。
※:国連世界観光機構/ UNWTO Tourism Highlights, 2018 Edition
インバウンド戦略④推進戦略
四つ目の戦略は、「推進戦略」です。こちらは「グローバル観光戦略」全体を着実に遂行するための指針です。
具体的には、「戦略推進委員会」を設置し、官民一体で戦略と施策を進め、その評価・調整を行います。
4000万人の訪日客、8兆円の消費額という目標は、政府・自治体・企業、時には地域住民までもが協力し合わないと達成できません。
したがって、全体をコントロールする母体をつくり、事業に携わる全員が連携できる体制を整える必要があるのです。
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グローバル観光戦略の成果と課題
グローバル観光戦略が打ち出された2003年の訪日客数は524万人でしたが、2013年に1000万人突破、2018年に3000万人突破と、年を追うごとに成果が伸びています。
そして政府は、2020年のインバウンド客数4000万人・消費額8兆円を目標に掲げ、上記4つの戦略を強化・発展させた「観光ビジョン実現プログラム」を発表しました。
取り組みの成果は順調に出ているものの、施策が地方まで細かく行き届いているとは言えません。
通訳や決済手段、通信環境、宿泊施設の整備などは、特に急がれる対策です。観光商品に関しても、外国人の目を引くものは依然として多く眠っており、深夜帯に提供するコンテンツ(ナイトライフエコノミー)も不足しています。
東京オリンピックやラグビーW杯などを単なる特需要因で終わらせないためにも、官民一体で観光産業を盛り上げていくことが大切です。
インバウンド戦略【成功をもたらすヒント】
ここでは、企業がインバウンド戦略を策定する際に意識すべきポイントを3点取り挙げます。
取るべき施策を見極め、目的達成への道筋を立てる上で参考にしてみてください。
インバウンド客の目線に立つ
インバウンド戦略を成功させるには、インバウンド客を理解し、彼らの目線で物事を考えることが極めて重要です。
提供する商品・サービスの企画・立案、プロモーションやPRを実施する際は、ターゲットとなる旅行者の興味、思考、行動に合わせた戦略を練りましょう。
同時に訪日外国人客が不便を感じる点にも注意しなければなりません。
外国人観光客を知る手段として、先述の「訪日外国人消費動向調査報告書」のような資料にあたるのが良いでしょう。その他にもトリップアドバイザーで人気のある観光地に寄せられたレビューを分析するのも有効です。
自社だけだと限界がある場合、外部の支援企業への依頼も検討することをおすすめします。
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明確な目的を設定する
明確な目的設定もインバウンド戦略を成功させるために重要なポイントです。
目的は 「インバウンド戦略が目指す未来は何か」の答えとなり、事業やプロジェクトの着地点です。戦略を練る前に、必ず明確にしておきましょう。
目的は分かりやすいシンプルなものにするのがコツです。「ムスリムのお客様獲得」や「中国人観光客依存の現状打破」ぐらいのシンプルさが適切だと言えます。
目的の内容が複雑だと、後に続く戦略も戦術も複雑になってしまい、実行するとき混乱を招く他、結果の分析などもやりにくくなります。
理想は1つのことだけを目指す内容です。もし複数設定するのであれば、優先順位を明らかにしておきましょう。戦略策定の負担が幾分か減るはずです。
やること・やらないことを明確にする
人材、資金、時間、情報、設備など、限られた経営資源の中で最大限の成果を収めるには、やること・やらないことを明確に区別しなければなりません。
取捨選択ができないと、どの施策にも中途半端なリソースしか行き渡らず、相応の中途半端な結果に収束してしまうでしょう。
各領域へ適切なリソースを分配できてこそ、戦略が戦略として機能します。戦略の肝は、限られた経営資源をどの領域へ分配するかという選択なのです。
この選択なくして、目的達成までの道筋は描けません。やること・やらないことをしっかりと見極め、貴重なリソースを無駄使いしないよう心がけましょう。
インバウンド戦略の成功事例
次は、インバウンド戦略の成功事例を2つご紹介します。
インバウンドで成功した企業は、どんな戦略を有していたのでしょうか。実際の具体例を見て、参考になるポイントを掴んでいただければと思います。
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満足度99%!飛騨古川のSATOYAMA EXPERIENCE
引用元: 「SATOYAMA EXPERIENCE」公式HP
まずは、株式会社「美ら地球(ちゅらぼし)」が岐阜県の飛騨古川で外国人向けツアーを提供する、「SATOYAMA EXPERIENCE」をご紹介します。
このサービスは2009年に開始され、今や年間3500人の利用者のうち80%以上が欧米豪を中心とした外国人です。さらに、世界最大の旅行口コミサイト・トリップアドバイザーで満足度99%を獲得しています。
同社のとったインバウンド戦略は、「何もない田舎の風景や日常を、あえて売りにする」というもの。
具体的な取り組みの1つとして、主にサイクリングツアーを催行するSATOYAMA EXPERIENCEを開始しました。飛騨古川の田舎感あふれる街並みや田んぼといった風景を、自転車でゆっくりと巡るのです。
欧米豪の文化や生活様式などは、日本と全く別ものです。だからこそ、私たちにとっては何でもない家屋や風景が新鮮に映り、非日常的な体験として満足してもらえます。
実際にサイクリングをした外国人客は、「ようやく出会えた、この風景!」と大喜びなのだそう。
有名な観光地だけでなく、現地の日常を知れる場所も、インバウンド客目線に立てば立派なリソースとなります。
またデータを見ても欧米豪からの訪日客は、日本の自然や伝統文化に興味を持つ人が多く、また身体を動かすアクティビティにもよく参加することが分かっています。(※)
SATOYAMA EXPERIENCEのサイクリングツアーは、欧米豪における需要を満たすコンテンツとして、都市部や景勝地に対する独自のポジションを築いているのです。
こちらの事例で伺えるのは、外国人客の目線に立つことで、はじめて認識できるリソースがあるという点です。日本人の考え方だけを持っていては、SATOYAMA EXPERIENCEのようなサービスは生み出せないでしょう。
戦略策定の際に割り振れるリソースはあなた次第で増減します。常にインバウンド客目線を意識して取り組んでいきましょう。
※:DBJ・JTBF/DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2018年度版)
参照:東洋経済オンライン/外国人が熱狂する「田舎では普通の光景」7選
外国人客が40%!京都の祇園畑中
引用元:「祇園畑中」公式HP
京都の旅館「祇園畑中」がとったインバウンド戦略は、「宿泊しないお客様をターゲットに据え、彼らに旅館で京料理を満喫してもらう」というものです。
宿泊客以外も予約可能なイベント「京料理と舞子の夕べ」は、料金が19000円と高額にも関わらず、申し込む人の40%が外国人になる成功を収めました。
また、このイベントへ申し込む人は80%が畑中に宿泊しないお客様となっており、きちんとターゲットを取り込めていることが分かります。
外国人客は宿泊の際、食事なしのプランを選択する場合が多々あります。
旅館で出る懐石料理だけでなく、外の飲食店でラーメンや丼もの、カレーといった日本食を楽しんだり、居酒屋を体験したりと、自分の好きなように満喫したいと考えているからです。
祇園畑中はこの特徴に合わせた戦略と施策でインバウンド誘致に成功しました。外国人客目線での戦略策定が大切なことがこちらの例からも伺えますね。
インバウンド戦略はプロに任せよう
インバウンド戦略を軌道に乗らせるために、有効活用してほしいのが、外部の支援企業です。
弊社LIFE PEPPERは、インバウンドに関するマーケティング・プロモーションの支援を専門で行っており、年間600件の相談実績を有しています。
弊社の強みは、アジア・欧米各国出身のネイティブスタッフが在籍していることです。彼らはマーケティングにも精通しており、日本人の専門家とチームを組んで、御社と二人三脚で課題を解決します。
またリサーチから戦略策定まではもちろん、後に続く施策の準備や実行も含めたインバウンド事業のトータルサポートができるのも弊社の強みです。
加えて現地のインフルエンサーやフリーランスとも提携して事業を進めており、より現地のリアルに沿った戦略や施策を進められます。
これらの強みを活かし、一過性でない確かな成功を実現します。
インバウンド戦略に課題をお持ちであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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インバウンドコンサルティング業者を活用しよう!選ぶ時に抑えるべきポイントとは
まとめ
今回はインバウンド戦略について、国が行う施策から、成功に繋がるポイントまで解説してきました。
今後のインバウンド市場は、ラグビーW杯や東京オリンピック開催間近であり、一層の加熱が見込まれます。
インバウンド戦略で外国人観光客に存在感を高めるには、まさに今がチャンスです。
まずは身近ですぐに着手できることを取り組みつつ、時機を逃さないように積極的にインバウンド支援会社の活用をおすすめします。
ぜひこの記事を参考に適切な戦略策定を進め、インバウンド誘致に繋げてください。