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株式会社LIFE PEPPER の高橋が、海外マーケティング、訪日インバウンドのキーマンにインタビューを行い、海外へ挑戦する生き方を選んだ背景や、仕事へのこだわり、今後の展望を聞くことで日本のグローバル化のヒントを掴むシリーズです。
第六弾のインタビューは、株式会社 Live Park の田熊さん。田熊さんは観光アドバイザーで日本に416ある離島の産品を扱う離島のアンテナショップをプロデュースされていたり、ライブコマースのエバンジェリストをされていたりと幅広い活躍ですが、元はビックカメラのインバウンド部署を立ち上げられた方です。田熊さんから、日本のインバウンドの問題点や今後の市場への期待についてお伺いしました。
まずは田熊さんとインバウンド市場の関わりを教えてください
私はもともとビックカメラで勤務していたのですが、お店に来るレアル・マドリードの選手を接客する担当者の募集がありました。
レアルの選手に生で会えるチャンスだなと思い、思い切って手を挙げました。私は英語は話せないんですけどね。
そこから社内で免税を増やしましょうという企画を出したりと、ビックカメラ内で「外国人といえば、田熊」というイメージがつき、外国人の接客をすることが多くなりました。
当然のように 2013 年にインバウンド部署を立ち上げるぞとなったときも声がかかり、立ち上げ担当をすることになりました。
まずは外国人採用を始めようというところから着手しましたが、すぐ壁にぶつかりました。それは、せっかく採用した外国人のスタッフが、1ヶ月以内で辞めてしまう事です。原因を分析すると、「優秀すぎる」ことでした。
外国人に慣れていない日本人スタッフは、少し見下すような態度を取る方もいました。その一方で、当時の外国人スタッフは、母国では一流の大学を出たり、裕福な家庭出身だったりして、「なんでそんな対応をされなければならないんだ」と不満が生まれていました。言ってしまうと、「コミュニケーションエラーにより、お互いを尊重できていないこと」ですが、非常に根が深い問題だなと思いました。
そこで双方に話を聞き、解決に動きました。
一番効いたのは外国人スタッフが日本人スタッフの「言語の先生」として、英語や中国語の講座をやってもらったことです。これにより相互にコミュニケーションが始まり、日本人スタッフも外国人スタッフを一目置くようになりました。
これにより人材が定着しやすくなっただけではなく、嬉しい効果もありました。
自分が認められたということで、外国人スタッフが自国の家族 / 友達 へお店を紹介してくれるようになったり、私へ「集客できる手段」を教えてくれるようになったことです。
当時まだまだインバウンドのノウハウも誰も持っていない中で、この「外国人スタッフの生の声」は大変ありがたく、日本に行ったらビックカメラに行くという認知が取れたと思います。そこから加速度的に認知度も売り上げも高まりました。
面白い経験ですね。ほかにもビックカメラ時代に培ったノウハウを教えてください
集客の方法についてのお話をできてなかったと思いますが、今では日本のインバウンドで当たり前になっている方法のうち、ビックカメラが外国人観光客の生の声をもとに最初に始めたものがあります。
あるとき、インバウンドの施策に悩んでいたので外国人のお客様にアンケートを取ったんですが、来店理由の1位は「たまたま通りかかった」でした。そこからの着想で、Tax free の看板・店内のPOPを始めました。そうすると、このお店は外国人フレンドリーなんだという印象がつき、お店に来てくれる。今では当たり前ですが、実はこれはビックカメラから始まっています。
ほかにも現場の外国人スタッフの声で、レジの隣に体重計を置いたこともあります。
接客をしていると、「この商品の重さはどれくらいか?」という質問が多かったので理由を考えてみると、LCC の荷物制限対策で、重量を測っているんだなと気づきました。
体重計と合わせて、レジ横にお土産品を置いたら飛ぶように売れるようになり、手応えを感じました。しかし、ほかのお店では当然体重計が置いておらずクレームが来るようになってしまったので、このサービスは停止しました。
田熊さんの考えるインバウンドのポイントを教えてください
そんなに偉そうにお話しできる事でもないのですが、私の経験でお伝えすると、プロモーションファーストにならないことですね。
受入環境整備が最初で、来てくれた外国人観光客の満足度を上げること。そうやって旅行者からの口コミが積み重なり、売り上げにいい影響を与えます。プロモーションだけを続けると、打ち上げ花火的になり、何の効果を得られないことも多い。
どうしても我々日本人は旅行者との接点が少ないからか、ターゲットの詳細なイメージを持つことができない。それなのに日本人の目線のみで考えてしまいがちな印象があります。中国人はこうだ、台湾人はどう、という変なものに囚われている。旅行者は、国境も国籍も関係なく、非日常を味わいに来ているということも忘れてはならないと思います。
来てもらうだけじゃなくて、どうやって「お金を落としていってもらうか」の設計も大事なポイントです。地域やお店にお金が落ちないので観光も競争が生まれにくくなり、面白みのない日本になってしまうことを危惧しています。
ただし、単純にものを高くするということではなく、旅行者の求める、価値のあるものを設計していく。これらのことが日本は得意じゃないと感じます。
最後に、一番大事なのは外国人採用強化をしていくことと、その方が誇りを持って働けるように、同じ目線で話を聞くことからかなと思います。
これからのインバウンド市場と田熊さんについて教えてください
一言でまとめると、「日本に来る」から「日本が好きだから来る」に変えたいというのが私の考えていることです。
これからのインバウンド市場は、これまで通りには絶対いかないと考えています。世界との競争も激化の一途を辿っており、世界中で観光客の奪い合いが始まっています。
その戦いでキーマンになるのが、在日外国人だと考えています。
新型コロナウィルスの蔓延で日本から外国人観光客が消え、世界に情報を届ける方法が少なくなった中、世界とのハブになる存在であり、貴重な一次情報を伝えられる存在。きつね村とか、在日外国人がゼロから発信し、バズるものが多い。
また、私はビックカメラでの経験もあり、在日外国人が活躍できるようにしたいという思いがあります。まずは、「外国人労働者」という言葉やそこから想起される印象を変えたい。このままでは外国人の方が住みにくい国になってしまうという危惧があります。日本人と外国人の共存をどうやっていくかが、これからの日本の課題です。
これらの方々は、母国での出世争いに疲れ、日本で平和に暮らしたいと考えている方々。そんな方々へ、あんまりな仕打ちをしている日本人が多いと感じます。
そういった方々が活躍できる日本になると、日本はもっと面白くなると思いませんか?
今後私は、在日外国人の方が日本を訪れた外国人観光客を案内したり、母国へ日本の情報を伝えるようなサービスを行っていきたい。私は在日外国人の方へ感謝をしており、このような “場” を作ることで、恩返しできればいいなと思っています。
編集後記
取材中、田熊さんは非常にロジカルにインバウンド業界の課題をまとめて話してくれました。ここには書ききれないほどの学びがあり、まだまだありそうだなという予感もしましたが、文字数制限もあり、全てを書ききれないのが惜しく感じます。
どうしても我々はデジタル上のデータ、プロモーション手法の議論が先行してしまいますが、訪日インバウンドは本来、エモーショナルな市場で、「リアル」を最初に考えないといけない。田熊さんのインタビューから、インバウンド業界の本質を感じました
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