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1927年創業の日本を代表する老舗文具メーカー、KINGJIM。 厚型ファイルやテプラなど、誰もが一度はオフィスで目にする数多くの文具を手掛けています。
LIFE PEPPERは、2022年から現在まで KINGJIMの海外向けSNS運用を通じて、ブランディング施策を行ってきました。同社が海外向けSNSの運用を始めたのは2020年。 コロナ禍で海外へのリアルな接点が失われるなか、新たなチャネルとして活路を見出したのです。
KINGJIM社 公式 Instagram グローバルアカウント
この記事の前半ではどのようなブランディング戦略を持ち、SNS運用・コンテンツ制作を行なったのかをご紹介します。後半では海外事業推進部 部長 藤間様 / 生亀様にインタビューを行い、SNS活用の取り組み、今後の展開などのお話を伺いました。
- Before
- コロナ禍で展示会が減少、海外とのリアルな顧客接点が失われていた
- 言語課題から製品のユニークさを伝えることに苦労
- 国内との商品ラインナップの違いから、投稿企画・制作に行き詰まり
- ターゲット・訴求軸が確立できず、アカウントが伸び悩む
- 広告施策の不調
- After
- 1年強でInstagramのフォロワー数が600名程 ⇒ 8350名に(2023年5月時点)
- 発信のコンセプト再考と訴求軸のテストマーケティングで、成果が伸びる訴求軸を発見
- Instagram運用を開始して以降、商品への問い合わせ、自社サイトへの流入率が大きく向上
- 認知を伸ばす基礎が構築完了、2023年は購買につながりやすい導線設計やKOL活用を検討中
- 行なったこと
- ターゲットと訴求軸が徐々に明確になる戦略を取る
- 顧客ニーズ・製品ラインナップ・強み・利用シーンの整理
- 新たなブランドメッセージの策定
- 訴求軸の仮説毎に複数のシリーズコンテンツ立ち上げ
- グローバルアカウントで重点ターゲット国を選定
- 1年強の運用メッセージをもとに、企画、制作、投稿、分析改善の継続
海外SNS運用/ブランディングを外部委託した背景
コロナ禍により展示会が減少し、海外顧客との接点が失われていた中で、2020年に社内で運用開始された海外向けのSNS発信。2020年7月にfacebook、2021年1月にInstagramをそれぞれ立ち上げています。
国内と海外での商品ラインナップの違いや、言語の違いから、社内での投稿企画・コンテンツ制作に行き詰まりを感じていたのが外部委託を決めた一つの理由。
KINGJIM社の商品は、ネーミングが日本語のダジャレ混じりのユニークなものが多く、言語の違いを高度に捉えて発信をしないと、面白さが伝わらないという課題がありました。
また、海外市場におけるターゲットや訴求軸が確立できず、コンテンツ企画のアイデア出しに苦労している状態でした。
このような課題を踏まえ、「コンテンツ企画の指針となるブランドメッセージ作り」「外国人現地ニーズを捉えた企画体制」「ターゲットと訴求軸が徐々に明確になる戦略」の3つを重点とし、SNS運用体制を強化することとしました。
ターゲットと訴求軸が明確になる戦略を取る
まず、プロジェクトの進行方向としてご提案させていただいたのが、「ターゲットと訴求軸が徐々に明確になる戦略」です。弊社の調査や外国人スタッフの目線を加えてコンテンツ企画力が高まったとしても、成果につながるターゲットや訴求軸が発見できなければ、再現性が低く、偶発的な成果に留まってしまいます。
中長期的にアカウントが成長する基盤構築には、ターゲットの明確化・成果が出る訴求軸を持つ必要があります。
そのため、発信するコンテンツを「消費者ニーズ」「伝えたいメッセージ」「コンテンツシリーズ」「投稿フォーマット」など、幾つかの軸で定義し、軸毎にテストマーケティングを行う戦略を取りました。
仮説を元に訴求軸を定め、実際の数値成果を分析することで、強いニーズや良質な訴求軸、成果が出やすいコンテンツフォーマットを特定しながら、プロジェクトを進行することが可能となります。
ターゲットの明確化や成果が出る訴求軸についてのさらなる参考資料として、こちらの会社概要・事例集・対応可能な国&施策まとめをご覧ください。
コンテンツ企画の指針となるブランドメッセージ作り
ブランドメッセージの策定に必要な追加情報は、私たちの詳細な会社概要・事例集をダウンロードしてご確認いただけます
ターゲット・訴求軸の仮説を持つ過程で、幾つかの軸でKINGJIM製品のターゲット・強みを整理しました。
KINGJIM社の経営理念の「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」であり、国内向けの発信では「楽しい」をコンセプトとしていると伺いました。
ユーザー体験における「楽しい」という感情は、いくつかに細分化されると考え、価値の整理を進めました。
① 価値の明文化
今回、価値の明文化をするにあたり「顧客ニーズ」「シチュエーション」「メッセージ」の3軸で情報を整理しました。
文房具を利用するユーザーにも、複数のニーズが存在しています。
- 発見、ワクワク、楽しい:
- 文房具を利用することで得られる便益を求めるのではなく、ユニークな製品の発見やコレクション、アイデアに面白さを感じる層
- 文房具を利用したアートや、綺麗に記載されたノート、綺麗な文字など、一種のコンテンツとして文房具を活用したものを視聴したい層
- 整理したい:物やデスクの整理など、整理整頓をしたいが故に商品を探す層
- 効率化したい:文房具の持つ便益によって、今までの文房具利用シーンより効率的に何かの作業を進めたい層
- …したい:その他、特定の目的の実現を叶えたい層
など
様々なニーズを整理した上で、KINGJIM社の製品ラインナップや強みと掛け合わせを行いました。
KINGJIM社の製品は、事務用品を中心としたBtoB製品が国内では認知が高く、海外では個人向けの製品の取り扱いが多いため、B2B/B2Cの軸が生まれます。
また製品ラインナップの特徴から、① ユニークな便益を持つ製品 = 機能的楽しい ② 視覚的楽しい とメッセージを大きく2つに整理しました。
② ブランドメッセージの策定・決定
顧客ニーズや価値の明文化を通じて、海外向けの発信のコンセプトを「楽しい驚きを提供するライフハックメーカー」と定めました。
このブランドメッセージ策定前は、マスキングテープ・ラッピング・付箋・アートなど、インスタ映えしやすいコンテンツが中心でした。しかし、価値の整理・ニーズ仮説の広さを行ったことで、本来KINGJIM製品が接点を持つことで、ファンになって頂けるユーザー層は他にも広く存在している仮説が生まれ、上記のブランドメッセージの決定に至りました。
「楽しい驚き」:様々な楽しさがある中でユニークな製品も多く、これらを求めるニーズに対しても発信を行う
「ライフハックメーカー」: 日常とビジネスシーンの両方で存在すること、効率化・整理などのニーズを捉えた発信を行う
などの意図・方針がメッセージに含まれています。
③ コンテンツをシリーズ化
ブランドメッセージを定めた後は、前章で記載した大戦略の「ターゲットと訴求軸が明確になる戦略を取る」を実現するために、訴求軸やターゲット別に、コンテンツカテゴリーを定めました。
これによりカテゴリー毎にコンテンツ企画・数値分析が可能となり、どのニーズ仮説・訴求軸仮説が実際にユーザーから高い評価を得られるのかが見えてきます。
④ 重点ターゲット国の選定による訴求軸明確化
また、全世界に向けたグローバルアカウントながら、重点ターゲット国を定めることで、訴求軸や戦略を明確化しました。
媒体ごとにターゲットを絞ることをご提案し、主に台湾とシンガポールに向けた情報発信を強化する方針に。ターゲットごとに好まれるクリエイティブの趣向があるため、ターゲットを絞ることでペルソナ像がより明確になり、企画案を生む気づきを得やすくなるメリットがあります。
成果
ここまでご紹介した戦略・ブランドメッセージ・コンテンツ企画体制を継続することで、プロジェクト開始から1年強でInstagramのフォロワー数が600名程 ⇒ 8350名に成長しました。
またInstagram運用を開始して以降、商品への問い合わせ、自社サイトへの流入率などが大きく向上しています。
様々な軸毎にテストマーケティングを行うことで、成果が伸びる訴求軸を発見でき、成果が出しやすい体制をこれまでで築くことができています。2023年は購買につながりやすい導線設計やKOL活用を検討中です。
また、KINGJIM様と取り組んだInstagramの新しい投稿フォーマットの「リール動画」が、LIFE PEPPER社内でも注目される成果となり、他のお客様でもリール動画の取り組みが増加するきっかけとなりました。
KINGJIM様インタビュー
コロナ禍で展示会が激減し、新たなチャネルとしてSNS運用へ
弊社)グローバルアカウント運用以前の、御社の海外進出の状況から教えてください。
当社では古くから海外との取引を続けており、アジア、北米、ヨーロッパを中心に20ヶ国ほどで商品販売に取り組んできました。また中国やベトナム、インドネシア、マレーシアには子会社もあり、日本企業が海外進出の際に活用する文具の販売も行っています。
このように海外進出は長く取り組んでいるものの、売上自体はわずかでした。というのも当社の置かれる状況が日本と海外では大きく異なっているのです。日本では、事務用品を中心としたBtoB商品での認知が高い一方、海外では個人向け商品の取り扱いが多くなっています。
これは事務用品の文化の違いが影響しています。例えば日本では書類をファイルに綴じ込むのが一般的ですが、アメリカではフォルダやボックスに投げ込むようになっており、ファイルの使われ方自体が異なっています。こうしたなか、2015年に文房具ブランド「HITOTOKI」の展開が始まった頃から、個人向け商材が増え、海外向けに取り扱える商品も増えてきました。
弊社)SNS運用は近年はじめられたと聞きました。その経緯を教えてください。
従来から英語表記のウェブサイトはあったのですが、事業紹介を文字情報でのみ発信するにとどまっていて、商品情報も載っていない簡易的なものでした。 商品拡充に合わせて、2019年に英語版サイトをリニューアル。 商品のラインナップやその特長がわかるような内容を盛り込みました。
そうしたなか海外への情報発信の転換点となったのは、2020年に発生した新型コロナウイルスの世界的なパンデミックでした。 それまで現地へのチャネルとして活用していた展示会が減少。 ユーザーとのダイレクトな接点が持てなくなってしまったのです。
そこで、若手社員が中心となり、海外向けの情報発信として、SNS運用に取り組むことになりました。 2020年7月にfacebook、2021年1月にInstagramをそれぞれ立ち上げ、社員自らが戦略の企画から撮影、投稿までを一貫して取り組む、ほそぼそとした運用体制でした。
「キックオフで当社の立ち位置を的確に把握」
弊社)SNS運用での課題はどういったところだったのでしょうか。
取り組んでいくなかで最も苦労したのは、言語でした。 ネイティブな感覚を持つ社員がいるわけでもないなかで、投稿文を考えるだけでも時間や労力がかかってしまったのです。 とくに当社商品はネーミングが日本語のダジャレ混じりのユニークなものが多く、そういったニュアンスを海外向けに発信する際に説明が難しく面白さが伝わらない、といったこともありました。
またアイデア出しでも苦労しました。 日本で運用しているSNSの投稿を参考に企画を考えていましたが、商品ラインナップが異なるため、海外で取り扱っていない場合も多くあり、苦戦を強いられたのです。
画像や動画の撮影も内製しており、手探りで運用に取り組んできました。 マネージャーの立場から見ても、行き詰まりを感じていたところもあったので、外部の方にご協力いただくことがいいのではないか、ということで協力先を探すことにしたのです。
弊社)外部支援企業を探すうえで考慮した点を教えてください。
支援企業を探すうえで最も重視したのは、企画立案です。 投稿のアイデア出しは運用全体のなかでとくに重い作業になっていたので、企画を提案いただける点はとくに重視しました。 また予算が限られるなかで、十分にフォローしてもらえるか、という点も考慮しました。
そうしたなかLIFEPEPPERとの打ち合わせで、提案いただいた内容が印象的でした。 プレゼン資料がわかりやすく、実務のイメージがしやすかっただけでなく、当社の立ち場を「楽しい驚きを提供するライフハックメーカー」と位置づけていただきました。 これまで当社で考えてきた方向性とそのフレーズが一致していたところも多く、当社の立場を理解してもらえたと感じ、依頼することに決めたのです。
仮説を言語化してくれることで検証ができるように
弊社)具体的な支援内容を教えてください。
LIFEPEPPERに加わっていただき1年ほどになりますが、大きく2つの業務をご支援いただいています。 1つは企画のアイデア出しです。 翌月の投稿案をLIFEPEPPERから提案いただいて、そこから当社の方で取捨選択し、内容を詰めていくというような形態で取り組んでいます。
もう1つは広告出稿です。 フォロワーを増やす手段として広告出稿は欠かせないものと考えています。 認知拡大という位置づけで、主に台湾とシンガポールで広告を展開しています。 ターゲットごとに好まれるクリエイティブの趣向がありますので、そうした部分でご提案いただいてるほか、結果の分析もお願いしています。
弊社)実際に取り組まれてみていかがでしたか。
まず支援初期の段階で、媒体ごとにターゲットを絞ろう、というご提案をいただいたのが印象的でした。 これまではグローバルアカウントとして運用してきたため、ターゲットも全世界としていました。 ですがそれでは投稿の内容がぼやけてしまうため、いまは台湾とシンガポールに絞って運営することにしたのです。 ターゲットを絞ったことで、その地域にあった情報を出すことができるようになり、運用しやすくなりました。
また仮説検証による運用ができるようになりました。 取り組むなかで「なにが正解か」が日本以上にわからないのが海外です。 そうした土台となる仮説を言語化して提案してくれるところがありがたいと感じます。
フォロワー数が14倍。SNSが購入のきっかけに
弊社)支援以降、具体的な効果は見られましたか。
まずフォロワー数が拡大しました。 Instagramでは支援前のフォロワーが600名程度だったのに対し、現在は約8,600名と14倍になりました。 ウェブサイトへの流入も増えていまして、SNSを見ていただいた方がそのまま海外向け公式ホームページに流れてきている状態です。 商品へのお問い合わせも増えてきています。 SNSのターゲットとしている、台湾やシンガポールのユーザー様からのお問い合わせが多く、購入のきっかけとなるような動きをSNSで実現できていると感じています。 投稿へのいいね数やコメントも多く、クリエイティブの方向性としてもターゲットからの評価を得やすいものになってきているのではないでしょうか。
https://www.instagram.com/kingjim.global_official/
弊社)海外向けの発信にあたって重視するようになったことはありますか。
これまでは投稿の企画でも思いつきベースで取り組んでいましたが、LIFEPEPPERからご支援いただくようになってからは、投稿の質の向上を意識するようになりました。 当社の強みと発信者の強みをかけ合わせるようなコンテンツが、より評価されるという話をいただいて、当社では、レジンアートの投稿に取り組むようになりました。
レジンアートは、レジンという透明の樹脂でアクセサリーなどを作るもので、当社の社員がレジンアートを趣味で作成していました。 そこで当社の商品を使ってレジンアートを作る投稿をすると、フォロワーさんからの反応が非常に良かったんです。 以来定期的に投稿する、人気コンテンツの1つになっています。 こういった企画の発想は、LIFEPEPPERからの支援以前には思いつかなかったものなので、ご支援いただいたことが大きなきっかけになっていると思います。
https://www.instagram.com/p/CtQxsqsv37j/
グローバルECサイトの出店など新たな企画も模索
弊社)SNS運用で大切にしていることはありますか。
コロナ禍を経たことで国内外問わずデジタルマーケティングの重要性が増している印象を受けます。 SNSに限らず、ウェブサイトやECサイトなどを最低限整備することが求められています。 最近は翻訳ツールも拡充してきているため、言語の壁があることに臆せず取り組んでみることが大切だと感じました。
またSNSではフォロワー獲得のために、プレゼント企画の広告ばかり出稿するアカウントも多く、実際にアカウントを見に行くと投稿がほとんどないというケースも見受けられます。 こうした運用では、一度フォロワーを取り込めたとしても、一気に離れてしまうリスクも否めません。 そのためフォロワーに楽しんでもらえることを第一に考え、日常的に投稿していくことが大切だと思います。
弊社)コロナ禍も一旦落ち着きを見せるなか、今後はどのようにSNS運用に取り組まれるのでしょうか。
ここ数年でデジタルマーケティングのノウハウも蓄積されてきたので、引き続き取り組みたいと思います。 一方で、徐々にリアルでの展示会も開催されるようになってきています。 先日ドイツでの展示会に出展した際には、SNSで投稿した動画をモニターで流すことで、ブースへユーザーを呼び込む1つのきっかけとして活用できました。 他にもメールでのニュースレターの導入など、オンライン・オフライン問わず、さまざまなチャネルを活用したマーケティングに取り組んでいきたいと思います。
SNS運用に関しては、引き続き認知拡大によるフォロワー数の増加を目指したいと考えています。 そうしたなかで投稿で紹介した商品が販売されていない地域がある、といったケースが増えてきています。 そのためグローバル向けのECサイトの出店もLIFEPEPPERからご提案いただいています。 これに限らず管理できるチャネルを増やして、商品購入への導線を確保していきたいと思います。
インタビューで触れられた戦略や取り組みの詳細は、対応可能な国&施策まとめを通じてご確認ください。
あとがき
LIFE PEPPERとKINGJIMの海外SNSブランディング成功の裏には、KINGJIMの魅力やターゲットの理解を高め、企画・制作で両者が密に協力する体制がありました。
今後も海外での認知度・売り上げ向上の観点で、事業がより拡大できるような提案を行えるように、同じ目標を目指すパートナーとしてのあり方を探っていければと思います。
KINGJIM社製品が気になった方は、B2B向けの商品ラインナップも非常に充実しているため、WEBサイトで商品をチェックしてみてください。
ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
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