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【ロボットレストラン 田中寛典】訪日ゲスト好みの「日本感」を形に。ロボットレストランの成功から学ぶインバウンドビジネスの本質とは

訪日客数の増加に伴い、急成長しているインバウンド市場。東京五輪が開催される2020年には訪日客数が4000万人を突破するとも言われ、まだまだ伸び続けることが予想されています。そんなインバウンド業界で様々な仕掛けを行う先達たちと、株式会社LIFE PEPPER取締役 高橋佑輔が対談する「インバウンド仕掛け人100」。
今回は、新宿区歌舞伎町で多数の訪日客を迎えたショーを繰り広げる「ロボットレストラン」のインバウンド営業部部長、田中寛典さんとの対談をお届けします。

ショーがメインのロボットレストラン

高橋:はじめに、田中さんが現在取り組んでいるお仕事について教えてください。

田中:新宿区歌舞伎町にあるロボットレストランを運営しています。レストラン業というよりもショーがメインのお店で、90分間のショーを1日3、4公演行っています。いわゆる劇場のような場所ですね。派手で奇抜なショーが欧米圏のお客様にウケるため、最近ではロボット色が少し弱めになって、人間のダンサーを中心としたショーになっています。

高橋:メインターゲットは欧米の方ということなのですが、どんな媒体を見て来られる方が多いですか?

田中:多いのがSNSと、トリップアドバイザーなどの口コミですね。テレビやメディア媒体を見られたり、代理店さんや旅行店さんにお勧めされて来られる方もいますが、SNSと口コミがダントツです。

直接予約のお客様も1、2割程度いらっしゃいますが、ほとんどが代理店さんを通しての予約ですね。しっかりプロモーションをしてくれているので、「ロボットレストラン」で検索すると代理店さんのサイトが上位に出て、お得に予約できる仕組みです。

創業当初のターゲットはサラリーマン?

高橋:ロボットレストラン自体は、最初からインバウンド向けに始められたものではないんですよね?

田中:最初は完全に違いました。2012年に創業したのですが、当時は現在 192 席あるところ、40 席ぐらいからのスタートで、ターゲットも歌舞伎町にいるサラリーマンでした。

高橋:インバウンドのお客様が増えたなと感じたのはいつ頃ですか?

田中:約1年後くらいですね。最初は外国のメディアさんのローカルな記事だと思うんですけど、「日本で変なことやっているところがある」ということで掲載されて。少しずつ、日本を紹介するネットブログなどで取り上げられるようになったのです。

変わったところへ観光に行ってみたいというマニアックな方たちから始まって、そのうちに映画監督やハリウッドスターに来てもらえるようになりました。そこから、SNSや口コミでどんどん広まっていったという印象ですね。

高橋:世間の人が思うロボットレストランさんって、「最初からメディア戦略を大々的に仕掛けてインバウンドに成功した」というイメージだと思うんです。でも実態ってまったく真逆じゃないですか。

本当に強みとなる自身のコンテンツの芯の部分をわかっていらっしゃって、それがたまたまメディアに取り上げられた。そこからプロモーション戦略を打たれたような形だと思うんですが、「これはいけそうだな」と思われたきっかけはありますか?

田中:米国の人気シェフでフードジャーナリストのアンソニー・ボーデインさんの番組ですね。今だにその番組で紹介していただいたショーを見て来たというお客様が多いです。世界的に有名な辛口コメンテーターが絶賛してくれたことから、本当にインバウンドのお客様が増えたと思います。

高橋:インバウンドに力を入れてから意識的に開拓されたプロモーション媒体はありましたか。

田中:OTA(インターネット上だけで取引を行う旅行会社)ですね。うちでものが売れれば代理店さんの売り上げにもなりますから、うまく協力してプロモーション打つことができていると思います。そのほか、政府の観光機関やホテルにも積極的にプロモーションをしてきました。

高橋:割引をつける代わりに代理店にキャンペーンを打ってもらうなど、ロボットレストランさんは代理店との付き合い方がとてもうまいと感じます。インバウンドの支援業者や、提供しているサービスについてはどう考えていらっしゃいますか。

田中:うちにも、例えばインフルエンサープロモーションをやりませんか、というような話はよく来るんですが、支援する会社さんも玉石混交で、真摯にコツコツやってくれるところもあれば、完全に足元を見てくるところもある。我々はそれをきちんと見極めながら、良い会社さんを伸ばしていかなければいけないと思います。

それから、今は相当相場が値上がりしている印象があります。特に中国圏のインフルエンサーさんなんか、ものすごく高くなっていますよね。

我々みたいな1店舗だけのお店と、大型商業施設とのサービス分けができていないと思うんですよ。たとえ料金が払えても、大型商業施設と同じ規模のお客さんに来られてしまうと、小さなお店は絶対に対応できないので。これからはインバウンドビジネスのサービスと価格帯が整備されていって、我々のような小規模店舗もそういったサービスを利用できるようになればいいなと思っています。

求められているのは「わかりやすい日本感」

高橋:ロボットレストランは、欧米圏の方々がハリウッド映画で持つ日本のイメージに近いのかなと思います。訪日ゲストの方々が思う「日本」を表されているのかなと。

田中:目指すところではありますね。外国人の方が想像している日本の形。昔でいうと、映画「ブレードランナー」のような。

私たちは、お客様に定期的にアンケートを取って、どういうものが受けるのが調べながらコンテンツを作っています。結果が伴わなかったものは改善していく中で、結局お客様が求める日本を表現すると、忍者や侍に落ち着いたんですね。我々がイメージする日本よりも、もっと「ものすごくわかりやすい日本感」が求められているのかなと思います。変に小難しいよりも、単純に忍者が戦ったりとか。原点に戻ってきた感じがします。

他にも、きっちりしすぎない外し感、ツッコミどころのようなものも点在させるようにしています。そういう部分が、お客さんがSNSでつぶやいてくれたり、口コミが広がりやすくなったりする要素なのかなと思います。

世界でここだけのコンテンツを

高橋:実際にショーをやっている中で感じる、日本へのニーズや期待は何かありますか?

田中:日本の文化は世界の中でもかなり独特らしく、お客様は、日本でしか会えないもの、日本でしか見られないものを見に来ます。

その中でも、うちでやっていることは他のところではまったくやっていないことです。ボリュームのあるレーザーショーや、パロディ要素を取り入れた派手でギラギラした演出。他所でもやろうと思えばできると思うんですけど、なかなかバカバカしくてやらないと思うんですよね。だからうちは、日本への期待というよりも「世界でもここだけ」だから来ていただいているのかなと思いますね。

例えばお猿さんと一緒にお風呂に入れるとか、猿カフェとか、なんでもいいんです。「うちはここが世界一だよ」という十分な売りがあれば、外国のみなさん来ると思うので。

高橋:「世界でここだけ」って良いですね。ただ、そこになかなかみなさん気づけないんですよね。自分だけのエッジの利いた圧倒的な強みを見つけて、プロモーションをかけて反応を見ながらPDCAを回していくっていうやり方が、インバウンドに必要なのかなと思っています。

人と人との繋がりが仕事として形になる

高橋:以前別のメディアで田中さんが「インバウンド業界みんなで発信していきたい」とお話されている記事を拝見したのですが、それは田中さん自身の想いや実体験があってのことですか?

田中:そうですね。この店って本当に、JNTOや観光庁の協力が大きいんですよ。発足した当初は見世物小屋みたいな感じで、周囲からも奇妙な目で見られていて。

でも実は、このケバケバしたバカバカしい店の下でものすごい努力をしている人がいる。10時間以上もレッスンするダンサーも、ものを作っている人も営業の人も、すごい努力をしていたんです。この頑張りをPRできないかなといろいろなところで話しているうちに、政府機関にも理解いただけるようになって、色物的な目で見られることもなくなって。そうやって少しずつ、業界の人に助けられながら進んできたと思うんですよね。

例えばこの間、クリスチャン・ディオールのパーティーをやったんですけど、もともとは数年前に営業部でホテルを回って、ホテルとの協力関係ができたことが始まりなんです。ホテルのコンシェルジュ協会の会合にご利用いただいたご縁から、ホテルのゲストさんにも紹介していただくようになって、様々な繋がりができていきました。

一つ一つは細い繋がりではありますが、人と人との繋がりが形になっていくところが面白いですね。今はSNSによって速く繋がることができますから、単独で頑張るよりもいろいろなところと繋がることで、今まで考えもしなかったことが実現できるんじゃないかと思います。

インバウンドビジネスは「何でもやってみる」が大切

高橋:最後に、インバウンド事業者さんにメッセージをお願いします。

田中:何でもやってみて失敗するのがいいと思います。我々の感覚と外国の感覚って全然違いますから。いろんな国の方がいるので、どれがウケるかはやってみないとわかりません。特にうちは切り替えが速いんですよ。メニューもショーも、新しいものがウケなかったらもう次を考えます。そういう変更の速さは強みかなと思いますね。失敗することも多いですけど、やらなきゃよかったとは思いませんし、次に繋がっていきますから。

高橋:素晴らしいことですし、私たちもそうあるべきだと思います。訪日インバウンド全体、そしてロボットレストランの今後については、どうなっていくべきだとお考えですか。

田中:インバウンド業界について言うと、いろいろな会社さんに入ってきていただきたいですね。インバウンドが関係ないと思ってるような業者さんの中にも、結構海外の方の目を引くものはあるんじゃないかなと。我々が日本の生活の中で普通にやっていることや消費しているものが、外国のお客様には面白いということが、まだまだあると思います。

どんな業態でも、きちんとお客様一人一人を大切に拾ってやっていけば、必ず結果につながるはず。私たちも、欧米圏の方にはウケていますが、そこが9割でまだアジアのお客様は取り込めていません。まだまだ道半ばなので、アジアのお客様や、エンターテイメントとしてショーを楽しむ文化がない日本人にも、満足してもらえるショーを作っていきたいと思います。

対談者のプロフィール

ロボットレストラン 営業部 本部長
田中寛典
ロボットレストラン2015年入社
社内経歴
営業職として入社後、ロボットレストランの店舗運営、BAR部門(AmericanBar&Cafe蓮)の店長などを渡り現在の営業部に就任しています。任期中に文化庁「beyond2020」承認取得、AKB48のミュージックビデオ撮影、ITE 香港國際旅遊展、異色肌ギャルイベント、Christian Diorディナーパーティーなど

社外経歴
貿易業務、サービス業、飲食店、学習塾講師、輸入雑貨店の商品企画やマネージメントなど多業種を経験している中でシルク・ドゥ・ソレイユ「ZED」に感銘を受けショービジネスに興味を持ちました。

株式会社 LIFE PEPPER  取締役
高橋 佑輔
経済産業省で約6年間勤務し、退官後株式会社LIFE PEPPERに参画。アジア全般のインフルエンサー、ブロガー広告に精通し、複数の日本企業の海外進出・インバウンド戦略に関わる。妻が台湾人の人気ブロガーであり、実際に台湾現地の最前線でインフルエンサーマーケティングを学び、マーケティング戦略に反映。”その国の国民性”に着目したプロモーション企画で唯一無二の価値を提供している。

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