アフターコロナに向け、少しずつ訪日客が戻り始めたインバウンド市場。ウィズコロナの中でインバウンド戦略の刷新に挑戦した、ホテル椿山荘東京 マーケティング部 島村 様へのインタビュー記事をお届けします。
Before コロナのインバウンド市場への課題と弊社との出会い
弊社)早速本題ですが、コロナ前にあったインバウンド市場への施策と課題感を教えてください
島村様)ホテル椿山荘東京は、今年で 70 周年を迎える、歴史のある施設です。
宴会場とレストランを運営していた「椿山荘」と、敷地内に併設していた「フォーシーズンズホテル椿山荘 東京」が統合して2013年に誕生しました。
もともと国内では「結婚式場」のイメージを持ってくださっている方が多く、その他ご宿泊やレストランもレジャー目的など、土日祝日のご利用が多いリゾートのような施設でした。
そこで、平日のご利用をどう増やしていくかを検討する中で、「インバウンドのお客様」を増やすことが大切になると考えたわけです。
実施していた施策は、海外メディアへの露出、インフルエンサーの受け入れ などの PR 施策が中心でした。
それ自体には不満はなかったものの、新型コロナウイルスの世界的な流行で、世界中から観光客が来られなくなったことを機に、メディアとのリレーションが中心の PR 的な施策から、少しずつ始めていた「PUSH型」の施策をメインに変えようかと検討していたところ、LIFE PEPPER さんに出会いました。
弊社)早速弊社の話を出してくださってありがとうございます。素朴な疑問ですが、弊社の最初の印象はどうでしたか?
島村様)独特のペースがあり、最初は不安もよぎりました(笑)が、プロジェクトを進めるうちに、独自の強み、他社にはない魅力に気がつきました。
ホテル椿山荘東京の持つ魅力
弊社)弊社との取り組みを始める前に持っていたホテル椿山荘東京の強みへの仮説を教えてください。この辺りを今回の記事の主題にしたいくらい、ホテル椿山荘東京というホテルは魅力いっぱいのホテルだと思っています。
島村様)ホテルとして以前から認識していたホテル椿山荘東京の魅力は、広大なお庭があること、三重塔などの日本らしさを、東京の真ん中で味わえること。
宿泊されたお客様の口コミでもこの点に触れられることも多かったので。
ただ、強みを活かしきれていないと感じており、五輪後のタイミングで発信できる庭園演出を考えておりました。2020年の五輪は延期となりましたが、コロナ禍でも投資を止めることなく、自然と日本の技術を融合した国内最大級の庭園演出「東京雲海」という新たな強みを発表いたしました。
日本国内では GO TO トラベル のタイミングと重なりテレビの取材をいただいたり、徐々に認知が拡がっていきました。一方、海外に対しては、日本に来られないタイミングでしたので、露出は敢えてしておりませんでした。ウィズコロナの目途がたつ予測が立ったタイミングで何か手を打ちたいなと。
ところで、 LIFE PEPPER さんのネイティブの方は当ホテルをどう思われていましたか?今だからこそ、ご感想が気になります。
弊社)ありがとうございます。
島村様とお話をし、施策を開始するとなった際、弊社のネイティブメンバー含め、ホテル椿山荘東京様に関する動画を見たり、海外での口コミを調べたり、泊まったりしました。
その結果、ホテル椿山荘東京は大変素晴らしく、間違いなく世界中の観光客に人気になる施設だと、全員の意見が一致しました。
最初の内部ミーティングは、オンラインで行ったのですが、東京雲海の動画をみんなで見た際、どよめきが起こりました。
日本在住の海外向けのユーチューバーが動画をあげていることも人気になると考えるポイント。
そのときの事前の仮説だと、夜の雲海、富士山の溶岩石を使った鉄板焼が楽しめるレストランなどが訴求点になるという仮説を持っていました。
もちろん、その他のコンテンツも魅力的なものが多く、仕掛ければ効果が出せる可能性が高い。しかし今までは、ホテル椿山荘東京様が持たれている魅力をそのままメディアなどの第三者が伝えるアプローチが多いゆえに、「魅力が伝わっていない」印象も持ちました。
そこで、弊社では誰にどう伝わって欲しいのかを仮説をもとに調査し、コンテンツ化しながら検証を行い、「伝え方」ではなく、「伝わり方」の実証を行いました。
それとホテルを訪れれば訪れるほど感じたのが、「ホテルとしての格の高さ」です。
例えばロビー階の男性用トイレの手洗い場にはタオルが置いてあるのですが、そのタオルは定期的に補充されている。いつ準備しているんだろうと感じました。
具体的には、打ち合わせの前に使ったタオルが打ち合わせ終わりには、もう補充されている。そのような細かいところにこだわれるホテルは強いし、気持ちいいなと。
また、ロビー階の大理石も素敵で、いつもホテルを訪ねるたびに叩いています。調度品のレベルも高い。
このようなところに象徴されるように、来る人を満足させるホテルだなといつも刺激をもらっています。神は細部に宿る、を体現されているなと。
島村様)そのような細かいところまで、ありがとうございます。
まさしく今おっしゃっていただいたような、事前仮説へのこだわりといったところが、LIFE PEPPER さんの魅力だと感じています。
インバウンドの市場は、まだ訪日ゲストがいらっしゃらない中で戦略を練らなければいけないので、手探り感がすごくありました。そんな中で、LIFE PEPPER さんは仮説を持ち、強みを見出してくれましたので、頼もしかったです。
そして、これもあるよ、アレもあるよ、ではなくわかりやすくシンプルに魅力を伝えることが大事だということを気づかせていただきました。これはインバウンドに限らずですが、改めてインバウンド市場も同じだなと。
そのほか、LIFE PEPPER さんのデータへのこだわりにも感心させられます。
定量データ、定性で得られた示唆を分析して読み込み、仮説とのギャップがないのかを検証していく。データから見て結論、きちんと判断してくれる。
弊社)お褒めに預かり恐縮です。ただ、念のため補足をすると、我々はデータのみに頼るとインバウンド市場はうまくいかないということも声を大にして伝えていきたいと思っています。例えば「東京雲海」にしても、データの積み重ねでは生まれないですよね?覚悟を持った誰かの意志が、他社を寄せ付けない魅力であり、強みになる。そんな、データではわからない不確実性の積み重ねの市場だと思っています。
島村様)LIFE PEPPER さんとお仕事をすると、すごく気づきが多く得られると感じています。
ですが、冒頭でお話をしたように、最初は独特のペースに少し驚きました。
普通の会社と空気感が違うというのでしょうか、個性が際立っている方が多く、関わる方々の魅力がはっきりしていて、それぞれ違った役割を持っていらっしゃる印象です。
だからこそ、この会社さんとは今までと違うものができると思えるし、不確実なインバウンド市場だと、こういうパートナーさんと組むことで、相乗効果でいいものが生まれてくるのではないかと期待が高まります。
今後の展望と「旅の目的になるホテル」
弊社)ここまでは過去の話を聞かせていただきましたが、今後の展望を話せる範囲でお聞かせください。
島村様)これからのホテル椿山荘東京は、70周年を迎えることもあり、お庭をただ見るだけではなく、体験として歩くことができ、何かを感じられるホテルを目指し、より加速していきたいと考えています。
具体的には、今まで培ってきた7つの季節(夏は風鈴・蛍、冬は椿など)の魅力を、年間を通じて感じていただけるよう、サービスを磨いていきたいです。
テーマパークのように、これからも完成することなく進化し続けることで「今年も行きたい」「別の季節にも行きたい」と思っていただけたら有難いです。
今後も東京にはホテルが増えていくので、お客様は新しいホテルに泊まりたいはず。そのこと自体は歓迎しますが、我々は東京に来る理由になるようなホテルであり続ける必要があると考えています。
正直なところ、これからインバウンドのお客様が本格的に戻ってくることが楽しみなんです。
ホテル椿山荘東京にとっては東京雲海が登場してから初めてのインバウンドシーズンですし。
早く海外のお客様に季節ごとに圧倒的な絶景のある椿山荘庭園をご覧いただきたい。そして旬を大切にした料理やおもてなしとともに驚きを提供したいです。
世界中の方が「日本といえば椿山荘だよね」と言っていただけるような、ホテルになりたいです。
どこの国のお客様が多くいらっしゃるのかも、蓋を開けてみないとわからない。一から頑張っていかないとなと思っています。けれども、その不確実性こそがインバウンド市場の魅力ですし、LIFE PEPPER さんの得意な市場だと思っています。今後も期待しています。
弊社)弊社としても支援する価値のある、日本を代表するホテルだと確信しているので、これからも訪日インバウンドの本質に徹底的にこだわるマーケティングをご提供してまいります。
その結果、インバウンド市場では困難とされていた、「何円投資すれば何円のリターンがあるのかわかる状態」まで持っていくことができ、さらに市場を伸ばすことができると思っています。
今日はありがとうございました。