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「越境EC」という言葉をご存知でしょうか。「EC」とは、エレクトロニック・コマース(electronic commerce)の略称で電子商取引と訳されます。皆さんが普段から利用されているインターネットを通じて商品やサービスの販売と購入ができる各種の手法を指します。以前はチラシや電話などで頻繁に行われていた通販の広告・販売などがインターネット媒体を利用して行われていることはご存知かと思います。販売側としては店舗を構えなくても商品の販売を広いエリアで展開できるメリットがあり、一方購入者側はインターネット上で決済や配送の手続きなども行え、自宅に居ながらにして多種多様な商品を購入できるメリットがあります。そういったインターネットショッピングやネット通販などを指す言葉が「EC」であると考えてよいでしょう。
いままでは日本国内での販売が主だったECサイトが国内だけの販売にとどまらず、海外のユーザーに向けた新たな取り組みに挑戦しています。「国境を越えたEC」である「越境EC」が最近注目を集めています。
「越境ECとは?」
一時期「訪日中国人による爆買い」というニュースをよく目にしたと思います。ここ最近爆買いは落ち着きを見せていますが、日本の商品やサービスがインバウンドを引き付けています。先ほどご説明した通り、インターネットを利用しての商取引をECと呼び、オンラインで注文を受け、国境を越えて商品やサービスを配送することを「越境EC」と呼びます。皆さんも海外旅行から帰国した後に思い出深いあの商品をもう一度買いたいと思ったことがあるのではないでしょうか。この希望を叶える方法を訪日外国人に向けて展開しているのが越境ECといえるでしょう。
No.1 海外のカスタマーと「越境EC」
観光庁の発表によると2017年には2,869万人を記録した訪日外国人が日本で消費する買い物は1兆6,398億円となっており、また、飲食に費やす金額は8,857億円に上っています。ここ数年で訪日外国人は増加を続けており、訪日で商品などを購入、または日本で飲食を楽しんだ後に帰国してからまた同じ商品を購入したいと考える訪日外国観光客らに向けて、足を伸ばさずに日本ならではの商品などをインターネットを通じて購入してもらおうという動きが出てきています。また、訪日外国観光客だけでなく、最近の日本文化の世界発信の潮流にのり、多くのファンの獲得に繋がっており、その海外のファン向けに商品の販売を行うことも越境ECの役目といえます。
販売側から見ると、近年の日本は少子化が進み人口が減少の一途をたどっており、商圏を海外に求めることができる越境ECは注目を集めています。今までは海外で商品を販売するためには、現地に店舗を構えたりしなければならずそのための人件費など多大なコストを支払う必要がありリスクも大きなものでした。しかし、現在は多くの国でインターネットのインフラが整いアジア圏だけでなく、欧米を含めた全世界に商品の販売をすることが可能となりました。リスクが小さくなり海外に商品をアピールできる越境ECは販売側にもメリットがあり注目度が上がってきています。越境ECの注目度が上がってきたことにより、海外企業でも参入しやすい環境やサービスが整ってきているので以前よりもより日本の企業でも越境ECに出店しやすくなっています。
しかし反対に越境ECに出店することへのデメリットも存在します。
主なデメリットととして
・言語・発送方法などを販売先の国に合わせて決めなければならない。
・販売先の国で適用される法律や規則に対しての知識がなければならない。
・為替変動リスクがあり、また代金未回収や返品未回収などが起こる可能性がある。
という点があげられます。
No.2 「越境EC」の出店方法
自社商品やサービスの商圏を飛躍的に伸ばす可能性を秘めた「越境EC」ですがどのようにして出店すればよいのでしょうか。日本国内向けのECのために、いろいろなCMS(コンテンツ・マネージメント・システム)があります。CMSとは、始めから自分でECサイトを構築するという手間を省き、管理画面など簡略化された方法でコンテンツを登録・更新できるシステムです。初めからサイト作りのためのHTMLやCSSを学ぶ手間が減り、更新の際も手間を減らすことができるため、多くの販売業者に利用されています。
では、越境ECの作成にはどのような選択肢があるのでしょうか
まずは販売者自身によるECサイトの構築です。上記の通り、すべてのwebページを自分で作成するため、webサイト作成のための知識が必要となり、更新の手間もかかります。また、翻訳などの手間もかかり、外注に出した場合はコストも高くなります。しかし、自由にECサイトの構築ができるため、レイアウトや決済システムなど自分の欲しい機能を選択できることが大きなメリットとなります。
代表的なEC制作CMSのWooCommerce
もう一つは国内ECサイトの海外版CMSです。自分でサイトを構築するよりも自由度が減り、利用には見合った料金がかかりますが、メリットとして日本語でのサポートがあるということと、サイト構築の手間を減らすことにより、商取引を早く始めることができます。
最後は海外のECサイトのCMSを利用するという方法です。国内ECSと同じように自由度が低いなどのデメリットがありますが、それぞれの国ごとに利用者の志向に合わせたデザインを用意することができ、利用したサービスが海外でよく知られていれば早期の集客にもつなげられることが期待できます。この方法であればデメリットとしてあげた発送方法や決済方法を現地に合ったものを使うことができるので出店の難易度も高くありません。
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「越境EC」が持つ可能性
越境ECにはどれだけの市場規模があるのでしょうか。現在までパソコンから利用されてきたインターネットがスマートフォンやタブレットなどを中心とした通信環境の整備により飛躍的に身近なものになりました。海外でも同じことが起こっており、訪日外国人観光客数が多い国の国内の普及率は中国では79%、次いで多い韓国では91%、アメリカでは72%と多くの人がスマートフォンを利用していることになります。これはECにとっての追い風になるのは想像に難くありません。越境ECで多くの人に自社製品をアピール、販売できるチャンスが広がっています。
No.3 「越境EC」の市場規模
経済産業省の資料によればスマートフォンの普及を背景にインターネットへの接続が手軽になり、ECサイトを利用して海外と商取引を行う消費者が増えていると報じています。2016年の越境EC市場は中国とアメリカを合わせて2,396億円に上り、いかに大きな市場になっているかがわかります。また、今後の市場成長推計を見てみると東京オリンピックが開催される2020年には2,832億円の市場に成長すると報告されています。2014年の時点で、日本やアメリカの総人口に対するインターネット人口の割合は80%を超えているものの、中国ではまだ50%代に留まり、日本・アメリカに比べて多きな伸びしろがあるといえるでしょう。
世界に目を向けてみると、越境ECの市場規模は2016年には4,000億ドルだったのに対し、2020年には9,940億ドルになるといった報告がされています。海外でも人気が高まっている日本文化や商品、サービスを世界に届けることができる越境ECはまだまだ成長が見込まれているのがわかります。
参考資料 http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001-2.pdf
No.4 「越境EC」を見据えてのインバウンドに人気の商品
越境ECで海外に商品を売り出せば大きな市場が広がっていることがわかりました。では、具体的にどういった日本の商品が海外で受け入れられているのでしょうか。訪日外国人旅行者の消費動向を見てみましょう。
訪日客が最も多い中国人の消費動向を見てみると、訪日中の「衣服類」の購入率が44.6%高く、購入者単価は一人当たり49,357円という統計が出ています。中国人は越境ECに積極的で67.7%が越境ECで日本の商品を購入しています。理由としては「訪日時に購入して気に入ったから」が全体の40.4%を占めています。特に中国では偽物が多く流通しているので、確実に「メイドインジャパン」の商品を購入できる日本のECは人気があります。店舗としてはECサイトや店舗内での多言語対応、また中国で多く使われている銀嶺カードへの対応などを行う必要がありますが、衣服類は越境ECに繋がりやすい商材だと言えるでしょう。
「越境EC」向きの商品は
ここまで販売側の視点で越境ECの現状を見てきました。では実際に越境ECはどのようなお客様に利用されているのでしょうか。実際にはどのような商品が越境ECに向いており、実際に手に取ってもらえる可能性が高いのか見ていきましょう。
No.5 ハラル食品
インドネシア人とマレーシア人の訪日観光ビザ発給要件が緩和緩和されたことや LCC(格安航空会社)の増便などを受けて、ここ数年はムスリムの訪日外国人が増えています。
ムスリムは戒律によって決められた食材や料理(ハラル)のみを取ること許されています。日本食には特にそういった慣習がないため忘れられがちですが、訪日ムスリムにとっては食事を取る場合も戒律にそぐわない食材が含まれえていないか考える必要があります。そういった問題を解決する「ハラル食品」が近年市場規模を拡大しています。越境ECの商品として販売する場合、ハラル認証を取る必要がありますが、日本食が世界に広まっていることと世界のムスリム人口を考えれば、今後ハラル日本食は大きな市場になるのではないでしょうか。
No.6 JTBの取り組み
日本の野菜や果物に関しても海外では人気が高く、訪日外国人観光客が多い香港、シンガポール、マレーシアは日本から特定の果物を持ち込む際に植物検疫証明書が必要ないこともあり、日本の果物をお土産に選ぶ観光客も多くいます。越境ECの例としてはJTBが展開する「J’s Agri」が良い例です。生産者からの産地直送で、航空貨物便を利用して商品を届けるので、鮮度とコストパフォーマンスが高い方法をとっています。生産者に取っても返品リスクの軽減や円での決済による為替リスクの回避など魅力的な提供者側にも大きなメリットのある商取引となっています。
越境ECを始める際に注意すべき点
越境ECのデメリットを上述しましたがそれらと合わせて注意しなければならないことがいくつかあります。
・配送料や手数料が国内よりも高い
注文を受けた商品は日本から海外へ輸出することになりますが、その場合は日本国内に配送するよりも料金が高くなります。したがって、国内向けの販売のように「低価格」をウリにして販売を行うのは難しい場合があります。
海外にはない商品や海外でも知名度のある日本のブランドの商品を販売する方が、「低価格」をウリにするよりも売り上げを見込めるでしょう。
・販売先の国によって法律が異なる
販売先の国が海外になれば当然法律も変わってきます。越境ECを始める際に必ずライセンスをとらなければならない中国のように、日本とはかなり異なる環境の国も多くあります。販売先の国の法律の調査が不十分だと、知らぬ間に法律違反してしまう可能性もあります。法律違反した場合、多額の罰金やペナルティを課せられる場合もありますので、販売先各国の法律はよく調査しておくべきでしょう。
・関税など国境を超える取引には制限が多い
国境を超える取引をする場合には商品に応じて関税が発生します。また国によっては輸入禁止に指定されている商品もあります。輸出入の許可リストは各国の税関リストに掲載されていますので越境ECを始める際には必ず確認するべきでしょう。
越境ECを始める際の細かい注意点や、リスクを避けるための戦略については、弊社がまとめた資料で詳しく解説しています。対応可能な国&施策に関する詳細は、こちらの資料をダウンロードしてご確認ください。
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まとめ
近年、訪日外国人観光客は増え続け観光は日本を支える大きな柱となっています。日本を訪れた外国人に日本国内でファンになってもらい、自国に帰った後でもリピーターになってもらえる環境を整備できるのが越境ECです。インターネットの普及により越境ECが構築され、今後スマートフォンの普及により伸び続けることが予想されます。越境ECを始める際に気を付けなければいけないことは多くありますが、それを乗り越えれば大きな売り上げを期待することができます。越境ECは日本の企業にとっては各種商品を世界にアピールできる場になることは想像に難くありません。世界中に自社商品のファンを獲得するため、越境ECという成長市場に挑戦することは今後必須になってくるでしょう。
弊社では現地のCMSを利用しての出店支援も行っておりますが、自由度の高い自社越境ECサイトの制作も行っております。越境ECサイトのデザインからコーディング、販売先の国別の法律の調査や配送体制の構築、ECサイトの集客プロモーションまで一括して行っています。
越境ECについてお困り際はぜひ一度ご相談ください。
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