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【ロッシェル・カップ氏】グローバルな環境で働くときに大切なことと、これからの労働市場

日々グローバル化が進む現代において、外国人と共に働いている方も多いのではないでしょうか。彼らとどのように力を合わせていけばいいのか・・・異文化コミュニケーション、人事管理、リーダーシップと組織活性化の専門家であり、日本のビジネスに焦点を当てた国際トレーニングとコンサルティングを行う「ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング」の社長、ロッシェル・カップさんに話を伺いました。

ロッシェルさんが異文化コミュニケーションに特化したコンサルタントとなった経緯

カップさんは日本企業を対象に、多文化環境の職場におけるコンサルティングなどを手掛けていらっしゃいますが、そこに至った経緯を教えてください。

カップ:高校時代にスケッチや絵画を描いていて、それを通じて日本の美術に憧れていました。そして大学では日本語を学び、夏の学生交流プログラムを利用して京都の企業で研修を受けたりもしました。卒業後はアメリカのコンサルティング会社で働きましたが「日本をもっと知りたい」と思うようになり、来日して当時の安田信託銀行、現在のみずほ信託銀行で2年間ほど勤務しました。

当時は今から30年ほど前ですが、日本企業が次々と海外に進出し、ハリウッドのスタジオを買収したり、ロックフェラー・センターを購入したりしていました。それを見て「これからは多くの外国人が日本人と一緒に働くようになるはず。私の日本での勤務経験も、きっと誰かの役に立つだろう」と考えるようになり、起業を目指してアメリカの大学院に通うことにしました。

大学院では、まず日本企業の文化的な背景や海外人事の課題について調べました。

また、日本の企業で働く多くの外国人に話を聞き、ビジネス上の問題点を挙げてもらいました。そのほとんどが、私が日本の職場で抱えていた悩みや不満と同じだったので「日本企業が外国人を採用するにあたり、直面すると思われる共通の課題がある」と確信しました。海外展開に際し、各社は弁護士や会計事務所、戦略的コンサルタントなどからはサポートを受けていましたが、外国人と日本人の文化的な違いをアドバイスできる機関は無かったため、ニーズが高いと感じて会社を立ち上げました。今年で創業25周年、おかげさまで長く続いています。

時代が変わっても職場環境の悩みは同じ

日本では外国人採用が盛んになっています。

かつて日本企業で働いたカップさんは、どのように感じていらっしゃいますか。

カップ:私が勤めていた安田信託銀行は、外国人採用に関して当時の最先端を走っていました。さまざまな国や地域を出身とする20人ほどが働いていて、大変珍しいので新聞に載ることもありました。しかし、それまでの事業は完全に国内向けだったため、英語ができる人材が少なく、盛んに中途採用を行っていたことを記憶しています。また同じころ、他の銀行や航空会社でも、若干名の外国人採用が始まりつつありました。

現在の日本では、確かに外国人採用が再びブームを迎えています。しかし残念ながら「入社しても、すぐに辞めてしまう・・・」と、問題になっています。私が勤めていた30年前と全く同じ状況で、まるでデジャブを見ているかのようです。せっかく外国人社員を採用しても、人事管理の仕組みそのものがほぼ当時と変わらず「日本のやり方に、いかに外国人社員を適応させられるか」と考えてしまうのです。

だから時代が流れても、同じように上手くいかないのですね。

日本人と外国人の働き方の違い

それでは、日本人と外国人の働き方について主な違いを教えてください。

カップ:まずは日常業務において、外国人社員は明確なコミュニケーションを求める傾向にあります。日本でいうところの「一を聞いて十を知る」が通じないので、伝統的な雰囲気の企業では、さまざまな誤解やトラブルにつながります。外国人は「自分の仕事はどこが重要なのか」「何が問題なのか」などの意見をはっきりと聞きたがり、日本人よりも言葉を用いて仕事の進め方を確認したいのです。当社の顧客からよく聞く例として、上司による「ちょっとこれは難しいなあ」という発言があります。日本人の部下は「それなら別の案に切り替えよう」と受け取りますが、外国人部下の場合「難しいのであれば、もっと頑張ってみよう!」と捉え、ますますエネルギーを注ぐそうです。

上司としては「止めたほうがいい」と伝えたかったのに、正反対になってしまった・・・。日本では「察しがいい」とされることも、外国人からすれば「超能力的」なのです。「なぜ、そこまで通じ合えるのか」と、不思議に感じてしまいます。

フィードバックの大切さ

カップ:日常的なフィードバックも外国人社員にとっては非常に重要です。日本では部下や同僚の仕事が優れていた場合、より多くの仕事を相談したり、任せたりすることがあります。こうして相手は、自分の担当業務が増えると「仕事が評価された」と実感するのです。一方で外国人は「この仕事、良かった」と、明確な感謝の言葉を求めます。日本ではまた、完璧ではないものに対して褒めようとしませんが、外国人と一緒に働く際には、この点も変える必要があります。

日本とアメリカの労働市場

日本とアメリカにおける、人事制度の違いについて教えてください。

カップ:日本企業の多くは、終身雇用制度もしくはそれに近い体制です。一度入社すると「半永久的に」在籍することになるので、非常にゆっくりとしたペースで昇給や昇進があり、そのための研修を実施したりします。管理職になるのは、例えば新卒で入社して10年先でしょうか。外国の企業では「入社2年目でマネージャーになった」「ある貢献をしたらボーナスが出た」など、実績に基づく待遇が用意されています。そのため、日本企業で働く外国人社員は「なぜ、成果を出したのに待遇が低いのか」と考えるかもしれません。そして、転職で給料が上がることを知ると「今の会社は好きだけど、給料の差があるから辞めよう」となるのです。外国人は一つの企業で長く働くことを重視せず、流動的な労働市場に意識を向けています。日本人は変わりつつありますが、基本的には「会社の外がどのようになっているのか」を知ろうとしないので、一つの職場でずっと働く方が多いのです。

これからの労働市場

カップ:今後、日本の労働市場はますます流動的になるでしょう。逆に終身雇用制度のままでは、経済が危機的状況を迎える気がします。その一方で日本人の多くは、キャリアプランを会社に任せきりで「何を学びたいのか」「どんな仕事がしたいのか」「自分の強みは何か」などを自ら考えることに慣れていません。こうしたスキルを身に付けないと、流動性のある労働市場はあまり機能しないので、大きなテーマになると感じています。逆に外国人は、こうした意識を強く持っていて「今の会社でやりたいことが叶わないのであれば、辞めたほうがいい」と考えます。賢い企業側であれば、優秀な人材を失いたくないので「従業員が何に関心があるのか」を意識し、互いのニーズをマッチさせていきます。日本企業では、社員が簡単に辞めないこともあり、人事も一方的になりがちです。働く人の声を聞き出すスキルが軽視されているように思えるので、もっと企業と従業員が歩み寄れるよう、人事制度を見直すことが大切なのではないでしょうか。

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