東京五輪を2年後に控え、ここ最近はますます日本を訪れる外国人観光客の数が増加しています。中でも顕著な伸びを示しているのが、隣国・韓国からの訪日観光客です。韓国からの訪日客をさらに増やすためにはインバウンドマーケティングが欠かせません。ここではそのポイントをご紹介します。
ここ数年の訪日韓国人の推移
日韓交流が盛んになったこともあり、2000年代から日本語を学ぶ韓国人学生が増えています。それに伴い、日本を訪れる韓国人の数も増加しており、中には何度も日本を訪れるコアなリピーターも少なくありません。
2017年10月までに日本を訪れた韓国人訪日客は584万人にも達し、この数字は2016年10月と比較して約38%も増加しています。現在は実に韓国人の8人に1人が日本を訪れているというから驚きです。
(参考資料:出典:日本政府観光局 JNTO https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf)
日韓両国を結ぶ航空機の数も年々増えており、近年は格安航空路線の参入も著しく、より気軽に日本を訪れることができるようになりました。
「2017年に発表された資料によると、訪日観光客全体の約36%がLCCを使って日本を訪れています。18歳から29歳の若者に限れば、約半数がLCCを利用しているのが現状です。
https://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00044&news_no=56
訪日韓国人観光客は今後も増加するとみられており、韓国人をターゲットにしたインバウンドマーケティングは観光立国としての日本を考える際、避けては通れないものです。
なぜ韓国人が日本を訪れるのか
なぜ韓国人が日本を訪れるのかというと、次のような理由が挙げられます。
・韓国から行きやすいから
・若者を中心に日本のポップカルチャーへの興味関心が高まっているから
・短期滞在でも十分に海外旅行を楽しむことができるから
・円安の影響で、高品質なものを手ごろに購入することができるから。
韓国から日本へは、様々な路線が就航しています。フライト時間も短く、時差もないため、気軽に訪れることができる外国としては最適です。
加えて2000年代から若者を中心に漫画やアニメ、ファッションなどのポップカルチャーに持つ人が増えたことで、日本を訪れる韓国人観光客が増えたと考えられます。
また、韓国国内では現在物価上昇が続いているというのも一つの理由です。
日本はアベノミクスの影響で円安が進んでおり、韓国に比べて高品質なものを割安に購入することができます。
そのため、日本のハイクォリティな化粧品や家電、ファッションなどを購入するために日本を訪れる韓国人も少なくありません。
韓国人に人気のエリア観光地
「訪日ラボ」によると韓国人観光客に人気の滞在先は、次の都市です。
1位 東京都
2位 大阪府
3位 福岡県
4位 千葉県
5位 京都府
東京や京都は外国人観光客が訪れる定番の都市です。
韓国人観光客にとりわけ人気なのが福岡です。
福岡エリアは韓国から日帰りで訪れることができるだけでなく、ご当地グルメやショッピングなどが楽しめることから、若者を中心に人気があります。
特に韓国と福岡を結ぶ航空機はチケットが安くなったこともあり、若者でも気軽に旅行ができる行先として大きな注目を集めているのです。
他には、大阪など「食べ物が美味しい都市」も人気があります。
韓国人観光客は西日本から入出国することが多いため、どうしても西日本の観光地を中心に巡りがちです。
インバウンドマーケティングをする際は、東日本や北日本など西日本以外の地域の魅力を発信するとともに、より快適で便利なアクセス方法を具体的に掲示するなどの工夫が必要でしょう。
つい数年前まで韓国人観光客が日本に求めるものといえば、温泉やゴルフが主流でした。
しかし、最近は若者観光客が増えたこともあり、温泉やゴルフ場といったハード面ではなく、聖地巡礼や登山、ショッピングといったソフト面へと求めるものが変化してきています。
特に日本のアニメやドラマなどに登場する所謂「聖地」は若者を中心に大人気です。例えばバスケ漫画「スラムダンク」のアニメオープニングに登場する江ノ島電鉄「鎌倉高校前」駅近くの「海が見える踏切」などは特に人気です。
ポップカルチャーに興味のある若者を中心に、聖地巡礼に訪れる人が後を絶ちません。
韓国というとどうしても日本に対して厳しい態度を取る国というイメージがありますが、若者を中心に日本のポップカルチャーは広く受け入れられており、それらゆかりの場所には日夜多くの韓国人観光客が足を運んでいます。
また、日本を訪れる韓国人女性の中には一人旅を楽しむ人も少なくありません。そうした女性にはマッサージやスパ、エステといった美容系のスポットも人気があります。
一方で、登山に興味を持つ韓国人観光客も少なくありません。
特に韓国には無い標高の高い山に人気が集まっています。
しかし、軽装備で険しい山に登ったり、ガイドやベテラン登山者の付き添いを得ずに登山を決行したりする人がいるのも事実です。
2013年には長野県の中央アルプスで、軽装で登山した韓国人観光客の自防事故も起きています。
西日本に比べて韓国人観光客が訪れることが少ない地域には、まだ知られていない魅力的なソフトが多数存在しています。
これから日本を訪れる韓国人観光客を増やすためには、そういったソフト面への知見を深め、より魅力的にPRする方法の模索が求められるのではないでしょうか。
韓国人の日本に対するSNSの投稿や口コミ
ネット社会とも言われる韓国のSNS投稿や口コミでは、日本に対してどんなことを思っている人が多いのでしょうか?
SNSの書き込みからは
・整然とした住宅街に感動を覚えた
・とてもきれいで清潔だった
・東京はソウルとよく似ていた
・女性のファッションやメイクが華やか
・韓国と中国からの観光客が多い
といった声が聞かれます。
それだけでなく「”他人に迷惑を掛けてはいけない”という考えが人々の間に強く根付ている」といった日本人の気質に言及する声もありました。
これらの声に意外な印象を受ける人も多いのではないでしょうか。
日本と韓国の間には歴史的な問題もあり、政治のレベルでは緊張が高まることも珍しくありません。
そのため、日本に対してあまり良い感情を持っていない人が多いと考えている人は少なくないと思います。
しかしながら、市民レベルでは政治や歴史と観光は分けて考えている人が多く、友好的なムードが高まっているのが現状です。
韓国では日本の音楽やドラマ、アニメ、漫画などが人気を博しており、「日流」という言葉も生まれています。
韓国人観光客に対するインバウンドマーケティングを考える際、どうしても歴史や政治のことが気にかかる部分もあるとは思いますが、市民レベルでの交流ではあまり心配する必要はないといえるでしょう。
まとめ
お隣の韓国から日本に来る観光客は年々増加しています。
この背景には、韓国政府が積極的に大型連休を設定していることも関係しています。
これからも訪日韓国人の数を増やし続けるには、韓国人観光客のニーズに合ったインバウンドマーケティングが欠かせません。
ハードを前面に押し出した観光プロモーションよりも、思い出や体験といったソフト面のPRを行うことが重要です。
また、日本に興味を持っている若者のニーズを把握することも忘れてはいけません。
韓国人観光客のニーズを探るとともに、そのニーズから一歩踏み込んだ提案をすることこそが一種の「おもてなし」であり、韓国人観光客を増やす一助となるのではないでしょうか。