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インバウンド × インフルエンサー成功の秘訣は、インフルエンサーにファンになってもらうこと。【インバウンド仕掛け人 100】

訪日客数の増加に伴い、急成長しているインバウンド市場。東京五輪が開催される2020年には訪日客数が4000万人を突破するとも言われ、まだまだ伸び続けることが予想されています。そんなインバウンド業界で様々な仕掛けを行う先達たちと、株式会社LIFE PEPPER取締役 高橋佑輔が対談する「インバウンド仕掛け人100」。
今回は、企業のマーケティング支援を行うアライドアーキテクツ株式会社_グローバル事業部_ 部長であり、日本人クリエーターの中国進出支援を手がけるVstar Japan株式会社代表取締役でもある番匠達也さんとの対談をお届けします。

口コミ作りとは、多くの人に知られるための受け皿を作ること

高橋:まず、番匠さんが現在取り組まれていることについて教えてください。

番匠:私は企業のマーケティングを総合的に支援するアライドアーキテクツ株式会社と、そのグループ会社として日本人クリエーターの中国進出支援を行う Vstar Japan 株式会社という2つの会社に所属しています。

アライドアーキテクツではSNSを利用したプロモーション支援や、中国のインフルエンサーを起用したマーケティング支援を行っています。Vstar Japanでは日本のタレントやYouTuberで中国に進出したいとお考えの方を対象に、中国のプラットフォームでのマーケティング展開やイベント企画などを行っています。

中国向けのマーケティングをしたい日本企業、中国に進出したいクリエーターの両方を支援している形ですね。主に美容メーカーやファッション関連の企業や、自治体などがクライアントです。

インフルエンサー起用の効果

高橋:私が聞くのもなんですが、様々なマーケティング手法がある中で、インフルエンサーを起用する場合はどんな効果が期待できるとお考えですか?

番匠:インフルエンサー施策は、プロモーションにおいて重要な ”口コミ作り” に効果的です。
特に独自性のあるプロダクトやサービスをお持ちの企業は、商品を買ってもらう際に顧客の口コミが大事になってきます。日本もそうですし、中国でも口コミは重視されています。インフルエンサーに発信してもらうことで、商品の良い点を口コミとして広げ、多くの人に見られるようになる受け皿を作ることができます。中でも20〜30代がコアゾーンですね。

ただし、口コミを作りたかったら必ずインフルエンサーを使えばいいという訳でもありません。例えば小売企業だったら、必要な施策はまた少し変わってきます。

高橋:そうですね。私たちが支援しているクライアントも、インバウンドについて何も分からないまま、とりあえずインフルエンサー施策に手を出してしまいがちです。まず「何がしたいのか」を見極めてから行うことが大事ですね。

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重要なのは、インフルエンサー目線でのマーケティング戦略設計

インバウンドでインフルエンサーは効果がない?

高橋:日本企業、行政の方からはインバウンドでインフルエンサーは効果が得られにくいという声をもらうことも多いです。

まず最初に言いたいのが、TOPインフルエンサーの方へどんなに予算を投じたとしても、それだけで圧倒的に成功することが難しいという事実です。そんな都合の良い魔法があるなら、日本中が人気観光地になっているはずです。
しかし、ある視点からみると、インフルエンサー施策を行うことは非常に有効な手法だとも考えています。番匠さんはどうお考えでしょうか?

番匠:例えば中国であまり知られていない商品や場所に関して積極的にプロモーションするインフルエンサーを見つけるのは難しいのが現実です。これは越境 EC でもインバウンドでも同じですが、やはりコスト面などを考慮するとインバウンドの方が難しさがあると思いますね。そのため、まずは中国で認知してもらうための“アイコン” として人気インフルエンサーに訪日してもらい、口コミを発信してもらうことが非常に有効な方法だと考えています。

高橋:台湾や韓国でも同じです。韓国を例に出すと、韓国のブロガーとして発信力のある方はブロガー業界でも超有名だし、多くのミドル級のブロガーさんたちがフォローしていることが多い。まずはTOP のブロガーさんに取り上げられることで、ミドル級のブロガーさんたちが追随して訪れることが理想の状態だと考えています。

中国インフルエンサーのトレンド

高橋:中国のインフルエンサー施策の中で、最近のトレンドや傾向はありますか?

番匠:今、中国ではインフルエンサーの数が増えています。その中で特徴を打ち出すために、美容やエンタメなど、専門分野に特化した人が人気になっています。

インフルエンサーの増加に伴い、事務所やサポート業者も増えてきました。中国では、例えばYouTuberのように動画の再生数によってお金を稼げるような仕組みがないので、インフルエンサーが自力でマネタイズするのは難しい。そのため、組織に入ってサポートしてもらうというケースが増えてきています。

コンテンツに関しては、日本では「TikTok」という名前で注目を集めている「抖音(ドウイン)」というショート動画アプリが人気です。全般的に、画像から動画、動画からショート動画、というトレンドの変化が起きていると感じますね。

インフルエンサー施策の進め方

高橋:インフルエンサー施策の進め方は、国により違いがあると感じます。番匠さんはどのように進められてますか?

番匠:例えば化粧品メーカーのプロモーションの場合だと、まず商品の訴求ポイントをヒアリングし、最適なインフルエンサーを選出します。起用が決まったらインフルエンサー側に連絡をとり、合意を取ってから実際に商品を使用してもらい、コンテンツを作っていくという流れです。

施策を行う際に大事にしているのは、クライアント側の話だけでなく、インフルエンサー側から出る意見も大切にすることです。

例えば、インフルエンサー側から「この商品一本で紹介すると広告色が強すぎるので、他の商品と合わせて紹介したい」など、自身の価値を保つための意見が出ることもあります。

高橋:そういう時、クライアント側から「なんでうちの商品だけじゃないんだ」という干渉があると、上手くいかないパターンもありますよね。インフルエンサー側も絶対に成功させたいからアドバイスをしてくれるので、過度な干渉はしないように注意するべきだと思っています。

番匠:そうですね。私たちはそういったことを回避するためにも、最初にクライアントとインフルエンサーと一緒に、大まかな見せ方のシナリオを考えています。
全員が合意した上で制作に入っていくので、最終確認段階での大幅な修正というのは基本的には少ないですね。

ファンになってもらうことが成功の秘訣

インフルエンサーとの関わりでの失敗例

高橋:インフルエンサーとの関わりにおいて、よくある失敗例などはありますか?

番匠:よくあるのは、フォロワー数のみを重視してインフルエンサーを選んでしまうことですね。日本でも中国でもフォロワー数が盛られていることはよくあるので、リアルなファンがどれくらいいるのかを見極める必要があります。特に中国では、海外のSNSの投稿を流用し紹介しているアカウントも存在します。こういったアカウントはフォロワー数が多く拡散力はありますが、プロモーション効果は極めて低い。このように、フォロワー数の多さだけでなく、そのインフルエンサーの属性も確かめないと失敗してしまいます。

また、中国SNSのプラットフォームのルールをよく知らずに使ってしまうケースもあります。注意すべきポイントを抑えないと、投稿が削除されてしまうなどして施策の効果が得られなくなってしまいます。

高橋:あまりお金をかけられないのに、無理してやってしまって失敗するケースもありますよね。インフルエンサーマーケティングは新しくブランドを作り上げるのに近く、時間もお金もかかります。資金がない中でやっても効果が得られにくいです。

インフルエンサー施策成功の秘訣

高橋:ズバリ、インフルエンサー施策を成功させるためにはどうするべきでしょうか。

番匠:インフルエンサーにその商品のファンになってもらうことです。成功したケースでは、まずインフルエンサー自身が工夫しながら動画を作ってくれたので、動画の再生数が伸びました。しかもそれで終わらずに、プロモーションが終わった後も愛用品という形で商品をSNSで紹介したことで、フォロワーの方にも「リアルで使っているんだ」と感じてもらえました。

また、インフルエンサーとインフルエンサーは友達であることが多いので、1人が気に入ってくれると、その友達のインフルエンサーにも情報が伝わることがあります。このケースでも、他のインフルエンサーを通じてさらに多くのユーザーへ商品の情報が広がり、大きな拡散につながりました。

一般消費者だけでなく、インフルエンサー間にも情報が伝わったことでプロモーションの成果が拡大した一例だと思います。

高橋:素晴らしい気づきですね。インフルエンサーにファンになってもらうために、心がけていることはありますか?

番匠:インフルエンサーの想いを大事にすることです。出来上がったものを勝手に修正すると、インフルエンサーの商品への想いが削がれてしまうので、そうならないように気をつけています。

あとは、商品を使ってもらう期間を十分に設けることですね。商品を渡して「1週間以内に動画のデモを上げてください」というやり方だと、単なる「仕事」になってしまうんです。そうではなく、実際に商品を体験してもらって使い心地を話し合ったり、フィードバックしたりする期間をちゃんと作ることがポイントだと思います。

高橋:そのような取り組みはまさに、自社マネジメントだからこそできることですよね。

私も、インフルエンサーにファンになってもらうことが究極のゴールだと感じています。ファンになってもらうような仕掛けが重要だと考えていますし、もっと言うと思いやりのマインドで接することが最大のプロモーションになると思っています。

例えば、海外のブロガーさんに日本の小売り施設のプロモーションをしてもらう時は、単なる施設の紹介記事ではなくて、「今回の旅は最高の旅だった!」という記事を書いてもらえるようにするんです。空港までの送り迎えもしますし、夜ごはんのお店にもめちゃくちゃこだわります。その結果としてブロガーさんに「最高の旅だった!」という記事を書いてもらえると、ユーザーの反応も良い。施設のPRにもなりますし、ブロガーさんにも日本のファンになってもらえるんですよね。

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大事なのは、「人」を大切にするという視点

今後のマーケットの展望

高橋:素晴らしいお話をたくさん聞かせていただき、本当にありがとうございました。最後に、今後のインバウンドにおけるインフルエンサー施策やマーケットの展望を教えてください。

番匠:今後は、“誰を”キャスティングするかよりも、 “どう伝えるか”が大事になると感じています。特に中国は訪日客が多く、旅行者が色々な情報を流しているので、一般的な情報は既に見たことがあるものになってしまいます。だからこそ、今後はコンテンツ面の工夫が重要になってくるはず。例えば、日本人のオススメを中国人の立場からインタビューした動画など、コンテンツとして目新しいものが SNS 上でバズって広まるようになると思います。

また、中国では今、海外のコンテンツが入ってくる機会が増えています。日本で放送されたドラマが1週間後には中国で動画配信されるほどです。それをきっかけに、日本の有名人が中国で人気になることも考えられます。今後日本企業は、中国市場やインバウンドへの波及力などを加味した上でインフルエンサーをキャスティングするようになるかもしれません。

ただ、インフルエンサー施策といっても、影響力がある人を取り上げることだけが重要ではないと思うんです。
インバウンドにおけるインフルエンサーは海外に日本の情報を発信してくれる人ですので、彼ら、彼女らとどうやって仲良くなるか、どうやってファンになってもらうかという視点を大事にすべきだと思います。

例えば中国人のスタッフを多く雇っている日本企業にとって、自社で働いているスタッフは海外に情報発信してくれる一番の応援団なわけですよね。その人達をちゃんと大事にして「うちの会社、良いよ」と言ってもらえるように努力するべきではないでしょうか。

遠くからいらっしゃる人をおもてなしすることも大事ですが、今すでに周りにいる人々にファンになってもらうことを重視して、マーケティング戦略を設計することが重要だと思います。

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対談者のプロフィール

アライドアーキテクツ株式会社 アカウント本部 グローバル事業部 部長
Vstar Japan株式会社 代表取締役
番匠達也(ばんしょう たつや)
2011年にアライドアーキテクツ入社。ファンサイト構築サービス「モニプラ ファンブログ」の拡販に従事し2014年に最年少で営業部門の局長に就任。2015年、日本企業の中華圏へ向けたマーケティング支援を行う事業部の立ち上げを行う。2018年4月、グループ会社であるVstar Japan株式会社の代表取締役に就任。日本人の動画クリエイターの中国進出を手掛けている。

株式会社 LIFE PEPPER  取締役
高橋 佑輔
経済産業省で約6年間勤務し、退官後株式会社LIFE PEPPERに参画。アジア全般のインフルエンサー、ブロガー広告に精通し、複数の日本企業の海外進出・インバウンド戦略に関わる。妻が台湾人の人気ブロガーであり、実際に台湾現地の最前線でインフルエンサーマーケティングを学び、マーケティング戦略に反映。”その国の国民性”に着目したプロモーション企画で唯一無二の価値を提供している。

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