使う人にとって便利だからWeChat。ユーザー目線でコンテンツ、ストーリーのトライアンドエラーを【インバウンド仕掛け人 100】 – グローバルデジタルマーケティングのLIFE PEPPER

使う人にとって便利だからWeChat。ユーザー目線でコンテンツ、ストーリーのトライアンドエラーを【インバウンド仕掛け人 100】

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2020年の東京五輪・パラリンピックが迫る中、ますます注目が集まるインバウンド市場。外国人観光客を呼び込むため、今の事業者に必要なこととは何か。株式会社VAIRON代表取締役であり、中華圏の人たちの習慣に合わせた情報発信手段(中国発メッセンジャーアプリ「WeChat」)を使ったプロモーションの先駆者である田村 篤久さんと、株式会社LIFE PEPPER 取締役、高橋 佑輔の対談をお届けします。

株式会社VAIRON
代表取締役
田村 篤久
中国圏に向けた日本企業のプロモーションサポート事業を展開。2010年より中国上海市で日本コンテンツを紹介する自社メディア事業を開始したことがきっかけで中国ビジネスに身を置くこととなる。「Weibo」や「WeChat」といった中国発祥のSNSが誕生し拡大していく過程をリアルタイムで見ることになり、そのノウハウを蓄積。2012年より本格的に中国人インバウンド向けに「WeChat」を利用した情報発信のサポート事業を開始。WeChat商用利用を日本企業向けに提供した第一人者と言われており、日本政府観光局(JNTO)をはじめ、今日まで数々の日本企業の対中国プロモーションに携わる。

株式会社 LIFE PEPPER
取締役
高橋 佑輔
経済産業省で約6年間勤務し、退官後株式会社LIFE PEPPERに参画。アジア全般のインフルエンサー、ブロガー広告に精通し、複数の日本企業の海外進出・インバウンド戦略に関わる。妻が台湾人の人気ブロガーであり、実際に台湾現地の最前線でインフルエンサーマーケティングを学び、マーケティング戦略に反映。”その国の国民性”に着目したプロモーション企画で唯一無二の価値を提供している。
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使う人にとって便利だからWeChat

ーはじめに

高橋:はじめに、田村さんが現在行っているサービスについて教えてください。

田村:私たちは中国圏及びアジア圏に対してのプロモーションを行っており、特に、中国のメッセンジャーアプリ WeChat を使った情報発信を得意としています。

WeChat には LINE のようなテキストや動画のメッセージ機能だけでなく、公共料金の支払いや、近くにいる人の検索など、様々な機能があります。
中国では規制がかかっているため LINE や Facebook といった、(中国から見た)海外の多くのアプリを使うことができません。だからこそ、中国企業によって生み出された WeChat は中国人ユーザー特化のメッセージアプリとして爆発的に広がりました。

私たちは自社の商品やサービスに対する認知度を高めたいと考えているクライアントに対して、現地の人たちが習慣的に使っているツールである WeChat を利用した情報発信をご提案しています。
方法はいくつかありますが、例えば LINE などと同様に、企業でアカウントを開設し、登録者に向けて情報を発信するというやり方があります。
現在は小売、メーカー、宿泊施設からのご依頼が多いです。

ー事業立ち上げの背景

高橋:田村さんが今の事業を立ち上げた背景について教えてください。

田村:もともとは中国で日本人ブログのまとめサイトを運営するため、上海にて現地法人を立ち上げたことがきっかけです。

その当時の中国では、人々の属性が「超有名人」か「一般人」という風に二極化しており、当時日本でブームになっていたブロガーといったような「一般人インフルエンサー」という層は存在していませんでした。

理由としては、中国ではそういった土壌が政治形態の関係で育ちにくかったのだろうと言えます。わかりやすく言うと、中国ではメディアは基本的に国営で、例えば雑誌等の出版物にも厳しい検閲があります。

そして先程もお話ししましたが「グレートファイアウォール(金盾)」の存在により、海外のインターネット情報閲覧に対し、制限がとても多いのです。
しかしながら、海外、とくに日本の情報を欲しがっている若者は当時確実に存在していました。そういった背景があり、日本の文化や商品に興味がある中国人若者層向けに、ファッションやメイク情報などの日本における流行情報をまとめたポータルブログサイトを現地で作ったことが発端です。

しかし、いざ運営を続けてみると、中国人にとっての情報発信フォーマットにはいわゆる「日本式のブログ」形式はあまり馴染まなかったんです。どういうものが馴染んだかというと、今も使われている「Weibo(=ミニブログ)」形式です。

つまり、写真に少しのセンテンスがある形式で、極めて簡潔なものが好まれました。文章中心ではなく、写真中心の投稿と閲覧です。
そして中国で今までにない一般人が投稿する形式のサービス誕生に伴い、少しづつですが Weibo 上で活躍する有名人が登場してきました。これが、ゆくゆく「インフルエンサー」や「KOL」と呼ばれる人々です。

そして、その流れの中、Weibo とはまた全く異なるサービスである WeChat が生まれました。

まとめると、私は創業以来「中国人にとっての便利」や「中国人がどんな行動をしているのか」に寄り添って事業を運営してきました。

日本企業に伝えたいのは、中国人は日本人のように自由に便利なサービスを使うという ”選択肢” を持てないということ。
中国でのインターネットサービスは、あるものを使うしかないんです。中国における「よく使われているもの」は、単なる流行ではなく、もっと切実な「使わざるをえない」に近い感覚です。
よく日本では「WeChatを取り入れたほうがいいですか?」というご質問を弊社にいただきますが、「では、WeChat 以外に何を使うのですか?」と少なくとも現在はお答えしています。この感覚を理解することが、とても大切です。

高橋:そういう背景があるので、私は田村さんをご紹介するとき、「WeChat のパイオニアだ」と伝えているんです。日本に伝えた、とかそういうレベルではなく、まさしく当時の中国で、かなり先進的なことをやられていたんです。

脱媒体論。ユーザー目線でストーリー設計、導線設計

ーWeChatの商用利用で大切なこと

高橋:改めてお聞きしたいのですが、WeChat の商用利用を行う上で大切なことはなんですか?

田村:まずはじめに理解しなければならないことは、WeChat は短期間で集客や認知度の向上を狙う広告とは同じように考えないことです。特に WEB 広告とはまた違う考え方での運用が求められるので、施策を打てばすぐに効果があると考えてはいけません。クライアントの担当者には、初回のお打ち合わせ時にまずこの話をさせていただくケースがほとんどです。

私はこの考え方をクライアントにお伝えする際に、よく花火大会を例にあげます。

例えば、普通の広告ならお金を払って出稿さえすれば、どれくらいの期間でどれくらいの PV 数がありそうか、ある程度は見込めます。しかし WeChat の場合はそもそも情報を受け取りたい人(フォロワー)を集めるところからスタートします。
対中国人のインバウンド施策を考える上で、皆さんはいきなりキャンペーンやイベント、KOL起用、SEO、広告出稿などを考えます。これらは一見派手で、「やった感」があるからです。しかしながら、だれも観客のいない会場で花火を上げても全然意味がありませんよね。

だからこそ、情報基盤となる花火会場を真っ先に設営する必要があるのです。その基盤に今現在最も向いているのが WeChat だと私は考えています。いわゆる「広告」は開始時に最も効果が出て徐々に落ち着いていきますが、「WeChat」は全く逆です。右肩上がりに時間をかけて徐々に成長させていく施策です。
他の「Instagram」などの SNS 同様、アカウントにコンテンツ力が求められ、まずはファンを作ることが重要です。

高橋:おっしゃる通りです。私も色々なお客様から SNS を使ったプロモーションができないか相談を受けますが、まずは他の広告との違いを説明するようにしています。短期成果を狙って始めると費用対効果が合わないことも多いので、中長期の戦略を意識してお伝えするようにしていますね。

田村:広告ツールというよりも、情報の受け皿として、WEB サイトなどと同じように考えるとわかりやすいかもしれません。通常、日本のサーバーで中国人向けのサイトを作っても、先の規制との兼ね合いや検索順位観点から、中国人に見られづらいことは明白です。だからこそ WeChat アカウントを情報の受け皿にすることが手っ取り早いのです。「WeChatとは」などと難しく考えず、「中国人に見てもらいやすいホームページ」という位の考え方で構いません。

また、弊社では WeChat アカウントの開設や運用サポートだけではなく、ファンを増やすための「WeChatの外側の」施策提案にも力を入れています。

例えば、実際に観光に来た中国人に対してはオフラインで QR コードから自社アカウントに飛んでもらったり、中国ドメイン中国サーバー上の LP を作ってそこから自社アカウントに飛んでもらったりします。その上で、次はどんな情報を発信することがユーザーにとって有益なのか考え、発信する情報の質や頻度もクライアントと二人三脚で考えていきます。

ユーザーが初めて広告を見てから WeChat アカウントに飛び、実際に商品やサービスを利用するところまでのストーリーを立て、全体設計をすることが必要です。
まとめると「WeChatを使えばうまくいく」のではなく、「どういうコンテンツやストーリーで WeChat を使うか」が重要なのだと思います。

必要なのは試行錯誤。間近に訪れようとしている新時代への備えを

ー訪日インバウンドでのベストパートナー

高橋:今、市場には訪日インバウンドの支援企業がいますが、長年業界を牽引された田村さんから見て、パートナーを選ぶ際、どのような点に気をつけるべきでしょうか?

田村:はじめにインバウンドに関わる事業者を大きく 2 つに分けて考える必要があります。それは「インバウンドプレイヤー」と「インバウンドサポーター」 です。

まずインバウンドプレイヤーは、訪日外国人と直接接点のある人です。業種は小売店、飲食店などの、直接外貨を支払ってもらう人たちですね。

次にインバウンドサポーター。これは、私たちのようにプレイヤーを支援し、日本企業から対価をもらう人たちです。モデルは、BtoBtoCです。

昨今、新しい市場ということでインバウンド向けの施策を提供する多くのサポーターが出現しています。しかし、新しい市場であるがゆえにノウハウが溜まりきっておらず、詳しい業者がいないのが現状です。そんな状況なので、絶対的なソリューションや方程式は存在しないと考えています。

一部の業界だけではなく、「インバウンド」という言葉が広義で使われるようになってまだまだ日が浅いにもかかわらず、サポーターの方がお話をする「この方法を使えば必ず成功する」といったやり方は、信用できないと思いませんか?

高橋:そうですね。出回っている情報自体がすごく少なく、その精度もあまり高くないというのは私も同じ認識です。

例えば私が数年前にインバウンドについて書いた記事がコピペされ、最新の考え方のように扱われているものもあります。日々試行錯誤を繰り返す中、新しいやり方がどんどん出てきている流動性の高い業界なので、数年前のやり方が今でも通用するとは限りません。だから直接外国人と接することなく作られている情報を鵜呑みにするのは危険だと思います。

田村:現時点で効果的だと言い切れるやり方はない。だからこそ各社は今トライアンドエラーを繰り返し、知見をためているところです。
かくいう私も、クライアントと一緒に最低でも月に一回ペースで結果の検証や施策の見直しを行っています。弊社の場合はどの企業よりも早く WeChat に着目し、効果的なやり方について PDCA を回してきたからこそ積み上げたノウハウがあり、その経験からなるアドバイスをクライアントへすることができます。

高橋:どれだけノウハウが溜まっているのかということが、訪日インバウンドで組むパートナーを探すためには大事なポイントかもしれませんね。逆に、アカウントの開設や運用など全部自前でやるという選択肢についてはどう思いますか?

田村:可能だと思います。むしろアカウントはただ開設して終わりなのではなく、良質なコンテンツを作り続け、育てる必要があるので、企業の積極的なトライアンドエラーは重要だと思います。
ですが、海外のサービスを使うわけですからリテラシーが0の状態で始めると時間がかかるのも事実です。だからこそ経験のある会社のノウハウを活かしてもらえれば、より早く結果にたどり着きやすいとは言えます。

ー今後の展望

高橋:田村さんが今後取り組みたいことはなんですか?

田村:インバウンドのノウハウやナレッジ、外国人の思考や行動原理を今一番わかっているのはサポーターではなく、むしろプレイヤーの方だと考えています。
サポーターが自社の提供メニューやプレイヤーへの営業手法を見つめている間に、プレイヤーの皆さんは実際に現場で外国人観光客と毎日接している。この差は歴然です。

なので、実際に観光客と触れ合っている観光地のスタッフや飲食店などからもっと生の情報を仕入れ、彼らが肌で日々感じている現場感覚を我々が学んでいく必要があります。

創業以来弊社は WeChat を使ったプロモーションに力を入れていますが、それは「今」効果的だからそうしているだけで、将来的に他に有効なツールが出現すれば積極的にそちらを学んでいきたいと考えています。

だからこそ訪日中国人が今どのように情報を仕入れ、観光やショッピングを行っているのかというリアルな姿に非常に興味があります。効果的な施策について誰もが模索している段階だからこそ、現場から拾える情報には大きな価値があるのだと思います。

ただ、現場には開発や宣伝周りの専門知識がないことが多く、ツールの詳しい機能や導入方法、それを活かしたプロモーション設計などを行うことは難しいのだと思います。その一助になるようなサポートをこれからも模索していきたいですね。

高橋:同意です。これから、インバウンドサポートを生業としている企業は、苦境に立たされるでしょう。
2020 年の訪日観光客が 4,000 万人を超す、この今まで誰も考えてこなかった日本において、本当に価値を提供できる企業しか生き残れない”新時代”が間も無く訪れようとしています。それを忘れないように、取り組んでいかなければなりませんね。


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