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日本を訪れる外国人観光客は年々増加しているものの、東北地方にピンポイントで訪れる外国人観光客は未だ多いとは言えません。
東北運輸局の「訪日外国人旅行者数の推移」によれば前年151%と顕著な伸びを見せていますが、東京などの都市圏に比べると東北を訪れる人は全体の0.9%に過ぎず、東北を訪れる訪日外国人旅行者を増加させるための早急な対策が求められているのが現状です。
東北地方の場合、2011年に起こった東日本大震災並びに福島第一原発事故のイメージが強く、それらが外国人勧告客のインバウンドを遠ざけている一因でもあります。
ここでは東北地方のインバウンド推移を詳しく見ていきたいと思います。
(出展:東北運輸局:http://www.maff.go.jp/tohoku/kihon/yusyutu/kyougikai/attach/pdf/index-36.pdf)
東北地方のインバウンド推移
東日本大震災が起きた2011に東北地方を訪れた外国人観光客は622万人だったものの、2012年にはその数が回復していき、2013年には1000万人を突破し2016年には2404万人にまで到達しました。
参照:http://www.maff.go.jp/tohoku/kihon/yusyutu/kyougikai/attach/pdf/index-36.pdf
東北運輸局の「訪日外国人旅行者数の推移」には、各都道府県ごとの訪問者数の推移も掲載されています。
(出展:東北運輸局 : http://www.maff.go.jp/tohoku/kihon/yusyutu/kyougikai/attach/pdf/index-36.pdf)
東北という区分について
まず、「東北」という区分についてですが、日本が決めた行政区分での知名度はほとんど無いと言っていいでしょう。指名検索ボリュームを西欧3カ国(アメリカ、オーストラリア、イギリス)を対象に調査したところ、以下のようになりました。
■検索ボリューム
・tokyo:301,000
・osaka:246,000
・kyoto:135,000
・tohoku:5,400
主要観光地である、東京、大阪、京都などにくらべて「東北」のキーワードを始めとしたそれぞれの県の検索ボリュームは非常に低い状況となっています。
例えば、日本人がフランスのワイン産地であるボーヌやロワールにワインを飲みに行ったことを「ボーヌに行ってきた」と友人に説明しないように、東北は県としてではなく日本の一地方として認識されているのでしょう。
平成29年1月から4月の調査結果によると、東北地方で最も外国人観光客が多く訪れるのは宮城県です。宮城県は東北の中で人口、経済規模も多いため有名な観光施設も多いことから外国人観光客が最も多く訪れることが予想できます。
しかし、宮城県よりも顕著な伸びを見せているのが青森県です。平成29年1月から4月における青森県の訪日外国人観光客数は、平成22年1月から4月に比べると383.9%とほぼ4倍に達しています。このようなデータを考慮すると、SNSマーケティングの適切な使用がいかに重要であるかが見て取れます。さらに詳細な事例については、【インバウンド業界編】SNSマーケティングにおけるコンテンツ成功事例集をダウンロードしてご確認ください。
余談ですが、知名度の無さをを逆手に取った施策として、青森県は訪日外国人観光客への自己紹介として青森を「ほぼ北海道」として説明しているそうです。
リピーターが多く訪れる東北地方
また、東北を訪れる外国人観光客の多くは、過去に東北を訪れたことがあるリピーターである点も注目したいポイントです。
株式会社日本政策投資銀行 東北支店の「2017東北インバウンド意向調査」によれば、アジア圏外国人観光客の実に75.5%、西欧圏外国人観光客の62.3%が、東北地方への訪問が2回目以上のリピーターであり、東北地方全体が訪日外国人から一定の評価を得ているということがこのデータからわかります。
出展:株式会社日本政策投資銀行 東北支店の「2017東北インバウンド意向調査」
東北がインバウンドで成功している要因
では、なぜ今東北が訪日外国人観光客に人気なのでしょうか。
株式会社日本政策投資銀行 東北支店平成29年10月にまとめた「2017 東北インバウンド意向調査」によると、外国人観光客は日本の次のような点に興味を持っていることがわかります。
アジア地域からの訪日観光客のニーズとしては、「温泉に浸かりたい」「紅葉や雪景色などの自然に触れたい」「郷土料理を楽しみたい」「歴史的な街並みを楽しみたい」「寺や神社、城跡などを訪れたい」などが挙げられます。
また、西欧地域からの訪日観光客のニーズは「歴史的な街並みを観光したい」「郷土料理を食べたい」「自然観光地を訪れたい」「温泉に浸かりたい」「都市とは違った地方ならではの風景を楽しみたい」この意向調査からわかるように、アジア地域と西洋地域のどちらのニーズも基本的には同じであり、東北がインバウンドを行う上ではこのような訪日外国人のニーズを満たすことが重要になってきます。
東北地方の場合、秋田県の乳頭温泉郷や宮城県の鳴子温泉郷に代表されるたくさんの温泉地があり、また自然も豊かで、世界遺産である白神山地や神秘的な五色沼湖沼群といったスポットもあります。これらの魅力を効率的に伝えるSNSコンテンツ作成に欠かせないポイントを知るには、ぜひ弊社の資料【インバウンド業界編】SNSマーケティングにおけるコンテンツ成功事例集をご覧ください。
他にも世界遺産の平泉や「みちのくの小京都」と呼ばれる角館、江戸時代の街並みを今に残す大内宿といった歴史的な街並みもあり、「歴史的な街並みを楽しみたい」というニーズを満たすことも可能です。
また、東北各県にはその土地でしか食べられないユニークな郷土料理も多く、「その土地でしか体験することができないモノ・コト、その土地でしか出会えないモノ・コト・ヒト」をを求める外国人観光客のニーズを満たすには最適な土地といえるでしょう。
地方空港への国際定期便の就航
東北地方の場合、羽田や成田といった国際空港からのアクセスが悪いというウィークポイントがあると思われがちですが、東北の玄関口である仙台国際空港を始めとして各県の空港で訪日外国人観光客数のトップ3を占める中国、韓国、台湾の直行便が就航しています。
特に仙台空港においては台北直行便が6社就航しており、毎日3〜4便が発着するという状況になっています。
49,501人
1位:台湾人(22,814人)
2位:韓国人(13,642人)
3位:中国人(9,121人)
また、2017年には仙台空港の国内線、国際線合計旅客数が3,438,630で2006年の3,387,463を超え過去最高を記録しました。特に国外線は前年と比べ124.4%伸びており、国際線就航本数が増えた現在さらなる利用者の増加がみられています。
また、ソウル週3便、中国および上海週2便が就航していた福島空港では震災後長らく国際的便の就航がありませんでしたが、2019年4月4日から台北定期便が木、日曜日の2便就航しました。福島県としては2020年に向けて路線を拡大してゆく構想だと発表しています。
空港とレンタカーの連携施策
東北地方では観光スポットが県をまたいで広い地域に点在しているため、効率的に巡ることができないというのも課題です。そのため東北地方を観光する訪日外国人はレンタカーを利用するというのが主な手段になっています。
東北などの地方へ向かう訪日外国人は2回以上日本に来たことがあるリピーターであることが多く、観光庁が発表した「訪日外国人旅行者の訪日回数と消費動向の関係について」では日本に2回以上訪れたことがある外国人客のリピーター数を見ると、2011年に401万人だったリピーターが2018年には約1,929万人を記録しています。リピート率が高い国別に見ていくと、約370万人の韓国、約310万人の台湾、約230万人の中国と続いており、近隣の国と地域からのリピーターが8割以上を占めています。
また、アジア圏8地域の外国人観光客は日本旅行時に宿泊地決定の際に、特に「主要観光地への交通アクセスが便利」かどうかを重視すると30%程度が答えており、では台湾では45%を超え、「ショッピングが楽しめる」「通信環境が整備されている」などの他の13項目を抑え1位となっているんです。
そのため、観光地が広く散らばっており自然や日本文化、温泉などの観光地をアピールしている東北地方では、空港到着からレンタカーを借りるまでの動線を確保するのが急務だと考えられます。
具体的な方策としては地方空港がレンタカー会社と連携し
・空港内および周辺にあるレンタカー会社のHPを多言語に対応させる
・空港のHPから提携したレンタカー会社のページへ遷移を可能にする
・中国、台湾、韓国など訪日主要国のOTAなどに現地ローカライズされたレンタカー会社のページを出稿し認知をはかる
などが考えられます。
遷移先のレンタカーやタクシー手配のサイトが日本語対応のみということはよくある事例で、そこで離脱する消費者は多いでしょう。また、宿泊施設や観光地なども外国人観光客への対応が十分とは言えないところが多く、そういったポイントが東北を訪れる外国人観光客の増加にブレーキをかけている点は否めません。
訪日外国人観光客に注目を浴びるスキー場
東北地方の中で訪日外国人集客という点で特に顕著な伸びを見せているスポットがスキー場です。
観光庁が平成27年10月にまとめた「訪日外国人消費動向調査 【トピックス分析】 平成26年訪日外国人観光客の地方訪問状況」によると、地方のみを訪問する訪日外国人観光客の約5%は主な目的として「スキーやスノーボードを楽しむ」ことを挙げています。
こちらの表が示している通り、現在国内のスキー・スノーボード市場は年々落ち込んでおり、2012年にはピーク時の約四分の一にまで減少しています。このようにスキー・スノーボード市場が落ち込む原因として、スキー場を訪れる人数が年々減少しているのが挙げられます。そして、外国人観光客がこの現状を打破する解決策として挙げられます。現在、外国人観光客が訪れるスキー場の多くが長野県や北海道、新潟県にあります。しかし東北地方にも裏磐梯エリアに代表される雪質の良いスキー場がたくさんあるので、それらの魅力をアピールすることでスキー場への誘客につなげようという動きが出ているのです。
多言語サイト制作のページ
出展:観光庁(http://www.mlit.go.jp/common/001107179.pdf)
出展:訪日プロモーション地方連携事業平成30年度東北ブロック方針
農家民泊
東北地方では、農家民泊への取り組みも盛んです。
近年、民泊が盛んになっていますが、農家民泊は文字通り農家に民泊をするという取り組みです。
農家に宿泊し、農業やその土地の暮らしを体験できることから、外国人観光客にも人気があります。
福島県金山町では、農作業や郷土料理が楽しめる農家民泊を町ぐるみでサポートしています。季節ごとに異なるアクティビティを体験でき、日本の原風景に触れられることから、わざわざ金山町を訪れる外国人観光客もいるほどです。
ただし、地方の農家民泊の場合、外国人観光客への対応が不慣れで、コミュニケーションを取るのが難しい点もあるなど、受け入れ側の体制を整えることが求められています。
それに加えて、地方を訪れる外国人観光客がよりアクセスしやすいよう、交通網の整備も必要です。
震災の影響
近年日本で起きた震災として東日本大震災や熊本地震を念頭にたものであるアジア圏8地域への”近年日本で起きた震災に関連して、あなたの日本旅行に対する考えは変化しましたか。最もあなた の意見に近いものをお選びください”という質問項目では、ポジティブな意見が全体の8 割程度となっており、震災後の日本旅行に対するポジティブな意向が読み取れます。
出典:日本政策投資銀行「東日本大震災後の訪日観光意識」
特に「安全と分かれば、支援のため被災地を積極的に訪問したい」との回答が全体の平均で 35.5%と高く、日本の情報を地方から世界へ発信してゆくことで、取りこぼしていた見込み外国人観光客を取り込めると考えられます。
訪日外国人観光客の多くはリピーターであり、彼らが再度東北を訪れる理由として挙がるのが、その地域固有の魅力です。そのような地域の魅力を世界へ効果的に発信するための実例と戦略は、弊社が提供する資料【インバウンド業界編】SNSマーケティングにおけるコンテンツ成功事例集を通じてご紹介しています。さらなるインサイトを得るために是非ダウンロードしてください。
まとめ
日本を訪れる外国人観光客は年々増加しています。
コアなニーズを持つ外国人観光客も多く、そのニーズを満たすために東北をはじめとした地方を訪れる人も少なくありません。
東北地方をはじめとした地方には、まだ外国人観光客に知られていない魅力的なモノ・コト・ヒトがたくさんあり、それらの魅力は徐々に浸透してきているのは地方と連携したプロモーションの成果といえるでしょう。
しかしながら、地方に対して興味を持つ外国人観光客が多い一方、肝心の地方の受け入れ態勢が万全とは言えず、どうしても旅行をする上で外国人観光客が不便・不満を感じやすいという点もあります。
今後さらに外国人観光客のインバウンドを増やすためには、プロモーションをより強化するとともに、受け入れ側の体制の充実も急務です。
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