News&Blog

インバウンド(訪日外国人旅行)とは?意味や最新動向、今後の課題を解説

近頃テレビや新聞、ネットなどで「インバウンド」という言葉を見聞きする機会が増えました。

インバウンド客、インバウンド対策などの関連用語もよく使われていますが、意味を正しく理解している人は、実はあまり多くありません。

文化庁が実施した調査によると、「インバウンドの意味が分からない」と答えた人は、全体の70%ほどにのぼります(*)。政府やメディアの熱量に反して、巷ではそれほど浸透していない言葉なのです。

この記事にたどり着いたあなたも、インバウンドの意味について「わからない」のが現状ではないでしょうか?

そこで今回はインバウンドの意味と使い方を解説した後、インバウンドが注目されている背景などもご紹介します。

ビジネスを成長させるにあたり、「インバウンド」は今後重要なキーワードですので理解を深めましょう。

*:文化庁/平成 29 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要
「インバウンド」とは?意味・注目される理由・取り組み方・成功事例など徹底解説!

インバウンドとは?どんな意味なの?

まずは、インバウンドの意味を押さえておきましょう。

インバウンド(inbound)は英語由来の言葉で、もともとは「外から中へ入る動き」を表す形容詞です。

これが転じて、日本では①観光、②ビジネスシーン、③ITの各分野において専門用語と化しており、それぞれ異なる意味合いで使われています。では、①から順に解説していきます。

「インバウンド」と「アウトバウンド」の違い

「インバウンド」と「アウトバウンド」は対義語同士であり、インバウンドは外から中に入ってくることを、アウトバウンドは中から外に出ていくことを意味します。

ビジネスシーンでは旅行業界や観光業界で使われることが多く、インバウンドは外国人観光客が国内へ訪れることを、アウトバウンドは日本人が海外旅行へ行くことを指します。

また、ビジネス全般でのアウトバウンドの定義として、飛び込み営業やコールセンターからの営業電話などが挙げられます。

関連リンク:https://lifepepper.co.jp/inbound/outbound-means/

観光でのインバウンド

1つ目のインバウンドは観光でのインバウンドです。

観光でのインバウンドは「訪日外国人旅行」を意味します。

2010年代後半から訪日外国人関連でインバウンドという言葉をよく耳にすると思いますが、ニュースなどで話題になるのは、ほぼこの文脈です。

関連用語も豊富で、インバウンド客・インバウンド対策・インバウンドビジネス・インバウンド消費などは特によく使われています。

インバウンド客は、訪日外国人旅行客。インバウンド対策は、訪日外国人旅行対策、つまり外国人客に訪れてもらうための取り組みです。

インバウンドの意味さえ分かっておけば、関連用語もすぐに理解できるでしょう。

外国人向けの国内サービスの需要を「インバウンド需要」と呼びます。インバウンド需要の例として挙げられるのは、爆買いやテーマパークの利用体験などです。

ビジネスシーンでのインバウンド

次に紹介するのが、ビジネスシーンでのインバウンドです。

ビジネスシーンにおけるインバウンドの意味は「企業へ顧客の方から接触すること」を指します。問い合わせや資料請求、Webサイト訪問が代表的な例です。

こちらに関連して、コールセンターなどで顧客からのアクションに対応することを、「インバウンド対応・インバウンド業務」と言います。

また顧客からの接触を促すための取り組みを「インバウンドマーケティング」と呼ぶ場合があります。企業HPやSNSでの情報発信は、インバウンドマーケティングの一部です。

外国人旅行者向けマーケティングもインバウンドマーケティングと呼ばれるため、混同に注意しましょう。

ITでのインバウンド

ITでのインバウンドは「受信」に関係する意味に使用され、インバウンドデータ・インバウンド通信といった関連用語があります。

また、外部サイトに貼られた自サイトへのリンク、つまり被リンクやバックリンクがインバウンドリンクと表されることもあります。

なぜインバウンドが注目されているのか

出典1:JTB総合研究所/訪日外国人数統計(2019年6月5日付)
出典2:観光庁/訪日外国人消費動向調査

インバウンドは今後の日本経済を担う、新たな基幹産業として期待が高まっています。

これから先の日本は人口減による内需後退が予測されています。そんな中でビジネスを発展させるには、外国人による国内消費が極めて重要なのです。

政府は経済対策においてインバウンドへ特に力を入れており、東京オリンピックが開催される2020年に客数4000万人・消費額8兆円を目標として、官民一体で市場拡大を図っています(*1)。

インバウンド施策は現在順調に成果が出ていて、上図の通りインバウンド客数・消費額共に目ざましい増加を続けています。2018年には客数3000万人・消費額4兆5千億円を突破し、国内のお菓子や酒類の市場を越える規模にまで発展しました。

インバウンドが着実に日本の主要産業となりつつあります。インバウンド客をターゲットにしたビジネスも一般に認知が広まっていますが、世界的に見ればまだまだ発展途上です。

2018年、外国人観光客の誘致数が世界No.1のフランスは8700万人を、消費額No.1のアメリカは23兆円を記録しました。アジア圏では、中国とタイが日本より上にいます(*2)。

今の差を伸びしろと捉え、豊富な観光資源を活かしたインバウンド対策が今後必須となるでしょう。

*1:観光庁/明日の日本を支える観光ビジョン
*2:国連世界観光機構/ UNWTO Tourism Highlights, 2018 Edition

水際対策の緩和・解除による海外旅行の回復傾向

新型コロナウイルスへの対応として水際対策が2年半実施されてきましたが、2022年10月11日から大幅に緩和・解除されました。具体的な内容としては、入国者数上限の撤廃や訪日外国人の個人行動解禁などが実施されます。

国連世界観光機関のデータによると、2022年7月時点で海外旅行者の入国数において、国ごとに違いがあります。世界全体を見ると、コロナ禍前の2019年7月比で-28%の減少であり、米国では-26%、アジアでは-75%、欧州では-28%となっていますが、日本はの減少率は-95%です。

これは、観光業界において日本が大きく出遅れていることを意味しています。海外の主要各国は水際対策を取りつつも徐々に対策を緩和し、対応してきたことで、海外旅行の入国者数は順調に回復しつつあります。しかし、日本は水際対策において慎重な姿勢を続けてきており、海外旅行の回復率が低いのはその分の経済的な損失とも捉えられます。

2023年のインバウンド需要

世界における海外旅行の入国者数は、2021年4月の19年同月比は86%で底打ちしてしまったものの、2022年の1月には64%、7月には28%と回復傾向にあります。この回復状態が続けば、1年10ヶ月ほどでコロナウイルスが感染拡大する前の水準に戻る想定です。

また、水際対策が緩和された後の日本における海外旅行の入国者数が回復するペースを見ると、2019年までの水準を取り戻せるのは2024年10月になる見通しです。2023年のインバウンド需要は2.1兆円と予測されており、2024年には4.3兆円、2025年には6.6兆円になると考えられています。

これから訪日外国人を増やし、インバウンド需要の高まりを経済の成長に繋げていくためには、供給力の拡大や宿泊場所で感じるであろう不安を解消する必要があるでしょう。海外旅行者の宿泊場所を積極的に拡大するなどして、一時的な入国者の増加で終わらないようにすることがポイントです。

インバウンド需要が拡大している理由

次に、インバウンド客数と消費額が増加した理由をお話します。

ここで挙げるのは、①アジア諸国の生活水準向上、②ビザ規制の免除・緩和、③円安の3つです。

アジア諸国の生活水準向上

訪日インバウンド客の85%を占める、東アジア・東南アジア諸国の人々の生活水準向上は、市場拡大における最も大きな要因だと言えます。

そもそも海外旅行は、経済面で豊かにならないとできないからです。日本人の海外旅行も、高度成長期を通じて経済的に成熟した1970年代から活発になりました。

中国、台湾、東南アジア諸国では、今まさに海外旅行への関心が高まっているのです。

そして、距離が近く治安も良好な日本は、観光先に選ばれやすくなっています。アジア諸国は今後も経済発展を続けると予想されているため、一層のインバウンド需要拡大も見込めるでしょう。

ビザ規制の免除・緩和

経済面の余裕に加え、渡航滞在に必要な条件が緩くなったことも、訪日インバウンド拡大を促しています。

外国人客誘致のために、政府は2013年以降、東南アジア諸国と中国からのビザ取得要件を免除または緩和しました。具体的には、必要書類の削減、有効期限の延長、必要年収の引き下げなどがあります。

この結果、同年~2016年にかけて、アジア圏のほとんどの国からの客数が20%以上増加しました。とりわけ2015年には、中国からの訪日数が前年比107%増となったほどです(*1)。

2019年には過去3年のうちに2回以上個人観光ビザを取得して訪日する中国人観光客リピーターに対し、提出書類の簡素化を行う(*2)など、よりビザ緩和が進行しています。

*1:日本政府観光局/国籍/月別 訪日外客数
*2:外務省|中国国民に対するビザ発給要件等の緩和

円安

アベノミクスの一環として2013年から円安政策がとられ、外国人が日本を訪れるハードルが低くなりました。

自国通貨に対し円の価値が下がるため、円を安く両替でき、その分旅行の予算が豊富になるのです。

たとえば2013~2015年に話題となった中国人の「爆買い」は、人民元に対して円安が進んだことが大きな要因です。

今は円安も爆買いも落ち着いていますが、当時訪日した人たちがリピーターになったり、SNSで旅行情報をシェアして認知度UPに貢献してくれたりしたことは、現在の活況の土台になっていると言えます。

成功するインバウンド戦略に欠かせないポイントとは?成功事例や策定のヒントを解説します

消費者マインドの変化

コロナウイルスのパンデミックにより、消費者マインドにも変化が起きたと言われています。

長期間渡航制限などにより海外旅行ができなかったことで、他の生活経費を削ってでも旅行をしたいと考えるユーザーは多くいるようです。ステイホームを求められてきた人々にとって、長期間の旅行や思い出に残る体験は需要が高く、規制の緩和とともに需要が広まっていくことが予想されます。

また、国内旅行であっても短期間の旅行を複数回行うのではなく、1回であっても長期間の旅行を求めるなど、サステナブルへの意識の高まりも伺えます。

イギリスの日本旅行専門会社「Inside Japan」では、顧客が首都圏を移動するためのPASMOを配布しており、残ったチャージ金についてはフードバンクの「セカンドハーベスト」へ寄付されています。

有名な観光都市だけではなく、ローカルな地域の文化を伝えることも視野に入れていくと、訪日旅行をより本格的なものにできるでしょう。そのためには、需要を分散したりこれまでなかった体験を提供できる環境を整えたりすることが欠かせません。

訪日外国人1人当たりの旅行支出額・旅行消費額

観光庁の訪日外国人消費動向調査結果によると、2023年1-3月期の旅行消費額は1兆146億円となっています。国籍・地域別に見ると、最も多い韓国が1,999億円、続いて台湾が1,535億円、中国が1,069億円、香港が1,054億円です。

コロナの影響で旅行消費額は2019年よりも11.9%減となっているものの、前年度の2022年と比較すると徐々に回復傾向にあります。

また、訪日外国人1人当たりの旅行支出は21万2,000円の推計となっており、国籍別では中国が74万7,000円で最も多く、次いでオーストラリアが35万8,000円、フランスが30万円となっています。

インバウンド客増加が企業へもたらすもの

ここでは、インバウンド客の増加が企業へもたらすメリットについてお話します。

挙げるのは、①新しい客層を取り込める、②繁忙期と閑散期の差をなくせる、の2点です。

新しい客層を取り込める

インバウンド客という新たな客層は、ビジネスを成長させるにあたって非常に重要な存在です。

2018年、インバウンド客数は国内人口の1/4に当たる3000万人を突破しました。さらに彼らは、時間をかけ、海を越えて訪れる分購買意欲が高い特徴も持っています。

商品・サービスを誰に提供するか考えたとき、インバウンド客が候補に入る業種は多いはず。宿泊施設や飲食店、小売店はもちろん、Webアプリ開発の分野などにも恩恵があります。

客層が広がると、単に収益がアップするだけでなく、ビジネスの選択肢も増えます。経営に幅を持たせられるようになるため、インバウンド客の取り込みは非常に魅力的なのです。

繁忙期と閑散期の差をなくせる

出典:観光庁/旅行・観光消費動向調査 2018年年間値(速報)

繁忙期と閑散期の差を、インバウンド客によってなくせる点も重要です。

特に観光業は、両者間の収益差が大きくなりやすく、日本人と休暇時期の異なる外国人層誘致のメリットが大きくなります。

たとえば、毎年2月前後にある中国のお正月に相当する春節。中国人が長期休暇を取得でき、彼らの訪日旅行も活発になる時期です。

一方、日本人による国内旅行は、このシーズンに1年で最も落ち込みます。消費額を上記のグラフで見ると、最盛期である7-9月に比べ、平均で28%ほど低くなっています。

そこで春節を迎える中国人向けにインバウンド対策を打てば、閑散期を埋められる安定した集客が見込めるようになるのです。

大阪で和食器の販売を手がける「大阪漆器」というお店は、春節が近付くと中国人客の好みに合った商品ラインナップへ店内を一新しています。その結果、売上の20%をインバウンド客が占めるようになりました(*)。

このように、集客における時期ごとのムラをなくせることも、インバウンド客増加がもたらすメリットとなります。

*:東洋経済オンライン/訪日客が殺到!老舗商店街のスゴい「仕掛け」

インバウンド観光の今後の見通しは?

日本政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人に増加させることを目標としているものの、今後の見通しは楽観的に考えられるものではありません。

日本の観光資源のポテンシャルより多くの外国人が訪れた場合、航空便や宿泊施設の制約などの現実的な問題が存在します。

特に、航空便は観光だけでなく、ビジネスや地域間交流がある場合にも就航するため、東アジア以外の地域の航空会社が直行便を就航させるのは困難です。また、宿泊施設が不足している状況が続いており、都心にその傾向が強く見られるため、地方での受け入れ能力の向上が根本的な課題とされています。

今後重要視すべきなのは、現在70%のインバウンドを占めている東アジア地域への特化という考え方もあります。入国審査を条件付きで簡素化するなどの方法で週末に気軽に訪日できる環境を整えられれば、6,000万人以上の旅行者数が見込まれるでしょう。

しかし、もう一つの目標である15兆円の消費額の達成は非常に困難といわれています。なぜなら、消費額を増加させるためには長期滞在が必要だからであり、十分な観光資源や環境を整える必要があると言われています。

観光のインバウンドにおける課題とは何か

ここでは、日本の観光のインバウンドにおける課題について、次の6点を解説します。

  • 環境問題に対する対策
  • 生産性の向上、IoTの導入
  • オーバーツーリズム
  • 都会と地方の集客格差
  • 自然災害・疫病など経済への影響
  • 消費者マインドの変化への対応

それぞれ見ていきましょう。

環境問題に対する対策

日本のインバウンド観光における課題の一つに、環境問題への対策があります。環境に優しい観光市場を実現することが大切です。

環境問題としていくつか課題が存在するなかでも、航空機のCO2排出が深刻な課題となっていますが、訪日客の大部分が空路を利用するため、航空機以外の面での削減策が求められます。具体的な対策としては、国内移動や滞在に関わる環境負荷の削減が重要であり、フードマイレージを低く抑える取り組みや地産地消の推進が必要です。

さらに、宿泊施設や観光施設においては、自然由来のエネルギーを活用し、その取り組みを積極的に公表することが求められます。特に、環境意識の高い人々や若い世代に訴えかけることで、人々の環境意識を高められるでしょう。

地域の魅力的な資源を環境に配慮した形で活用することは、持続可能な観光の実現に欠かせません。

生産性の向上、IoTの導入

サービス提供における生産性の向上やIoTの導入なども、インバウンド観光の課題の一つです。

今日のインバウンド市場で求められているのは、訪日外国人へ対する一律されたサービスではなく、観光客ごとに合わせたサービスといわれています。訪日体験の満足度や消費額を高めるためには、個人の趣味嗜好やニーズを満たすことが欠かせません。

対策の一つとして有効なのは、IoTの活用です。IoTとは、さまざまなモノをインターネットを通じて情報交換を行い、生産性を高めようとする技術を指します。

しかし、実際の現場へのIoTの導入は遅れている傾向にあります。観光事業を担う人々は、IoTの重要性について理解しているものの、なかなか実行に移せていないのが現状です。

オーバーツーリズム

オーバーツーリズムとは、観光客の過剰な増加による、観光地の生活や自然環境への悪影響のことです。日本では京都や鎌倉などで起きている現象であり、このオーバーツーリズムもインバウンド観光の課題の一つとされています。

原因として考えられるのは、初めて訪日する外国人が多いことです。解決策として、観光客が行きたいと思える観光場所を作り、訪日外国人にリピートしてもらえるような環境にしていくことが望ましいでしょう。

都会と地方の集客格差

都会と地方の集客格差についても、一つの仮説としてインバウンド観光の課題に挙げられています。

アジアから訪日する人々の多くは、日本国内の地方へ訪れても、結局その地域の中の都会に滞在する時間が多い傾向にあります。

しかし、欧州豪地域から訪日する人々は、田舎の方へ訪れることが多いようです。理由は国民性によるコミュニケーションの取り方であるとされており、積極的なコミュニケーションで地域の人の話を聞く機会が多いことが考えられます。また、欧州豪の人々はその土地の素朴さや秘境に関心を持つ傾向にあることも、理由の一つです。

欧州豪地域からの訪日は人数こそ少ないものの、上手く価値提供をして旅客単価を高めることで、インバウンド観光の課題解決に繋がるでしょう。

自然災害・疫病など経済への影響

自然災害の起こりやすさや、疫病の発生などによる、経済への影響もインバウンド観光の課題として取り上げられます。

近年では、コロナの影響で訪日外国人の受け入れをストップせざるを得ない状況となり、コロナ禍の日本への総客数はほぼゼロ人の状況が続きました。

2022年より日本は2年ぶりに訪日外国人の受け入れを再開したものの、旅行客の増加率は緩やかであり、訪日のハードルを高く感じている外国人が多いことが分かります。

消費者マインドの変化への対応

コロナのパンデミックによって変化した消費者マインドへ対応することも、インバウンド観光を盛り上げるために欠かせません。

長期間海外旅行ができなかったことにより、「そのほかの経費をカットしてでも、旅行に行きたい」という消費者マインドを持つ人が増加しました。そのため、長期間の滞在や特別な体験を望む人は多く、より観光地への期待が高まっていることが分かります。

また、サステナブルツーリズム(持続可能な観光)を意識していくこともポイントです。リピートを増やすことはもちろん、1回あたりの旅行で長期滞在してもらうことや地方への旅行を提案することで需要を分散できると考えられます。

訪日外国人へ新たな体験を提供し、東京や京都などの有名地以外のローカルな文化を公開していくことでインバウンド観光をより長く繁栄させられるでしょう。

海外へのインバウンドの課題

ここでは、欧米豪や中東、インドなどにおける海外のインバウンドの課題を解説します。「認知層へのアプローチ」と「無認知層へのアプローチ」の2つに分けて見ていきましょう。

参考:日本政府観光局 22市場基礎調査(2022年4月)

認知層へのアプローチ

東アジアや東南アジア市場では、多くの市場で日本の観光地やアクティビティについて認知しており、さらに興味を示していることが特徴です。

「日本政府観光局 22市場基礎調査」では、海外旅行実施者の訪日までの検討状況や行動について、次の4段階に分けた割合を算出しました。

  • 無認知:日本という国は知っているが、観光資源を知らないため、旅行先として捉えていない
  • 認知:日本の観光情報は知っており、旅行先として認知している
  • 興味関心:日本の観光情報について興味はあるが、旅行の予定はない
  • 比較検討:日本の航空券やホテルを検索・他国と比較しつつ、旅行を検討

海外旅行実施者の訪日ファネルによると、東アジアや東南アジアにおける認知度は台湾が最も高く、99.3%が上記の「認知」「興味関心」「比較検討」に回答しています。また、認知度の低いマレーシアでも7割が日本を認知しており、全体では約9割が日本の観光地やアクティビティを認知しているようです。

出典:海外旅行実施者の訪日ファネル

認知層へのアプローチとしては、この層を往来再開後の予約購入に繋げていくことが必要だと言われています。

無認知層へのアプローチ

東アジアや東南アジアでは日本の観光情報について知っている認知層が多かったものの、欧州豪やインド、中東市場では、無認知層の割合が高くなっています。

以下は、各国の海外旅行実施者における訪日までの検討状況です。

出典:中長距離海外旅行実施者の訪日ファネル

グラフから分かるように、欧州豪やインド、中東市場では無認知層が多く、全体の約半数が日本の観光情報についてほとんど知らない状態となっています。特に、英国やドイツ、中東地域では半数以上が無認知層であるため、日本の観光地やアクティビティについて魅力的な情報を発信し、「認知」の割合を増やしていくことが重要とされています。

また、認知していても「比較検討」のフェーズでなければ、来日してもらうことは難しいでしょう。そのため、メキシコや米国、豪州、スペインなどの比較的認知層が多い国については、関心を維持しながら「比較検討」の層を増やしていけるような対策が求められています。

世界から見た日本のポジションとは

引用:https://unsplash.com/photos/AFB6S2kibuk

世界から日本を見たとき、2つのポジションが存在します。

1つ目は、東アジアや東南アジア市場からの目線であり、比較的日本への訪問率が高い市場になります。日本に海外旅行へ行く際の旅行単価は20〜30万円程度であり、滞在期間は4〜7泊が平均です。旅行単価や滞在期間は欧米豪などの地域に比べると低い傾向にあります。

2つ目は、欧米豪やインド、中東地域からの目線です。海外旅行で訪れる国の中で、日本は旅先にランクインしておらず、同地域では欧州と米国や、豪州の間で行き来することが多くなっています。日本へ行く際の旅行単価は40〜60万円程度であり、滞在期間は7〜10泊が平均のようです。

このような日本のポジションについても理解した上で、インバウンド事業を進めていくことが欠かせません。

インバウンドビジネスの事例


ここでは、インバウンドビジネスの事例について、①最上川クルーズ、②奈良の滞在型観光計画、③大阪一丸キャンペーンの3つをご紹介します。

具体例を見れば、インバウンドの全体像を把握しやすくなるはずです。順に見ていきましょう。

台湾人観光客に大人気!最上川クルーズ

出典:最上峡芭蕉ライン観光株式会社HP

⼭形県の最上川クルーズは、その名の通り観光船に乗って最上川を下りながら、川沿いの四季折々の景色を楽しむツアーです。

景色だけでなく、船頭が唄う舟歌も好評で、インバウンドに合わせて中国語・英語・フランス語の3言語にも対応しています。

ゆったりと日本の風情を感じられるとあってインバウンド人気が高く、参加者の半分以上が外国人とのこと。

中でも台湾からの旅行者が圧倒的に多く、山形県全体を見ても、外国人旅行者の半分以上が台湾人となっています(*1)。

台湾と山形を結ぶチャーター便が年間140便も運行されていて、アクセスが非常に良い点が主な理由です。また、NHKドラマ「おしん」の舞台として台湾で広く知られており、彼らの関心が高い観光地だと言えます。

山形県は、内陸部に銀山温泉や寺社、日本海側に雪や米が有名な庄内地方を抱え、観光資源が豊富です。

この2つの地域を分断するように流れているのが最上川で、観光の移動手段として、最上川クルーズが人気を博しています。

台湾人は日本の自然や歴史文化に関心を持つ傾向にあり、観光資源とターゲットの属性が合致しているわけですね(*2)。

そして、雄大な最上川でしか味わえない体験が、山形県のインバウンドにおけるキラーコンテンツを作り上げているのです。

*1:平成 30 年外国人旅行者県内受入実績調査の結果について
*2:DBJ・JTBF/アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年版)

参照:自治体国際化協会/舟歌が山に響く最上川クルーズ、多言語対応で広く呼び込め

消費額全国最低からの脱却へ!奈良の滞在型観光計画

次にご紹介する事例は、インバウンド消費額全国最低からの脱却を目指す、奈良県の取り組みです。

奈良県は東大寺や奈良公園、法隆寺といった世界遺産にもなっている観光資源を抱え、古都の風情を感じられる観光地として、近年インバウンドの人気が非常に高くなっています。

都道府県別訪問率で全国5位を記録する奈良県は、年間300万人のインバウンド客が訪れる一大観光地です(*)。

しかし同時に、インバウンド客の消費額は全国最低を記録しています。1人あたりの金額が1万円を下回っているのは、奈良県だけです。

原因は主に、以下の3点が挙げられます。

①飛鳥や吉野、十津川といった奈良市以南の観光地が認知されていない
②宿泊施設数が全国で最も少ない
③大阪・京都へのアクセスが良すぎる

これらによって、日帰りで完結してしまう観光地となってしまっているのです。

そこで奈良県と各市町村は

①ヤマト王権の中心地であった奈良中部のPR
②熊野古道へ繋がる南部のPR
③大型旅館「和空法隆寺」、古民家を再生した宿といった宿泊施設の開業

などの対策を打ち、時間をかけて奈良を満喫してもらうことで、消費額アップを図っています。

まだ成果を語る段階ではありませんが、今後の動向が注目されるところです。

インバウンド客はここ数年で急増しました。この変化にマーケティングや環境整備面で追いつけていない自治体は多く、奈良県の現状がその典型です。

ただ同時に、インバウンド観光の将来性が伺える事例でもあります。

*:観光庁/訪日外国人消費動向調査 地域調査結果(2018年10-12月期)

参照①:自治体国際化協会/「通過型観光から滞在型観光へ」、奈良県が富裕層マーケットへの新たな挑戦!
参照②:自治体国際化協会/古都“YAMATO”のブランド力で、奈良県中部への誘客・観光消費の増加を目指す!

台風で減った需要を回復!大阪一丸キャンペーン

出典:大阪一丸キャンペーン公式HP

大阪一丸キャンペーンは、株式会社Bridge One Asiaが2018年10月~11月にかけて行った韓国向けのPRで、大阪観光局や大阪城公園の他、一般企業も多数参加しました。

キャンペーンの目的は、同年に近畿地方を襲った台風21号の影響で減少したインバウンド客を呼び戻すこと。

災害が起こると、その地への旅行はどうしても控えられてしまいます。そこで必要なのが、現地の安全性を証明する情報発信と積極的なプロモーションです。

同社は韓国マーケティングに強みを持っており、キャンペーンサイトで大阪の復興と魅力を発信することでインバウンド需要の回復を目指しました。

2018年が終わってみれば、大阪のインバウンドは伸び率こそ前年比3%増と鈍ったものの、客数は過去最高の1142万人を記録し、台風によるマイナスを跳ね返すことができました(*)。

もちろん大阪一丸キャンペーンだけの功績ではありませんが、復調をもたらした施策の1つだと言えます。

日本は台風と地震が多く、どの地域でも規模の大小に関わらず災害を受ける可能性があります。こうした非常時のリカバー方法も、インバウンドにおける重要な取り組みなのです。

*:大阪府観光局:来阪外国人旅行者数 直近5か年の推移表

参照:インバウンドNOW/「大阪一丸キャンペーン」とは?インバウンド客を呼び込むために官民一体となって取り組みを実施

まとめ

今回はインバウンドの意味を解説した後、観光におけるインバウンドの現状や市場拡大の背景などをお伝えしました。

東京や京都、大阪などの主要都市では、外国人観光客を見かける機会は多いです。彼らの足は地方へも向けられており、インバウンドビジネスが定着しつつあります。

ビジネスを成長させるにあたって、成長・発展性あふれるインバウンド市場は非常に魅力的です。

ただ同時に、何から手を付ければ良いか分からなかったり、言語対応などの課題を自社だけでは解決できなかったりといった悩みを抱え、なかなか前へ進めない企業も増えています。

その際に有効活用していただきたいのが、外部の専門家による支援です。

弊社LIFE PEPPERは、インバウンドに関するマーケティング支援を専門で手掛けており、年間600件の相談実績を有します。

弊社の特徴はアジア・欧米各国出身のネイティブスタッフと日本人スタッフが、チームを組み支援にあたることです。

さらにリサーチから計画立案、そして実行と改善に至るまでをトータルでサポートできるため、ターゲットに対し訴求力の高い施策をスピーディかつ高精度に進められます。

インバウンド事業を始める上でお困りのことがあれば、ぜひ弊社へご相談ください。お問い合わせは無料ですので、お気軽にご連絡いただければと思います。

Category Category

訪日インバウンドの関連記事

Popular Popular

訪日インバウンドの人気記事